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【環境について考えよう】
未来の食卓はどうなる?「農業と環境」を守る意識と行動

【環境について考えよう】未来の食卓はどうなる?「農業と環境」を守る意識と行動

前回の記事で、おうち時間が増えた今こそ取り組みたい「食品ロス削減術 」をテーマに環境問題を取り上げました。一方、わたしたちの食には、“消費”だけでなく“生産”も欠かせない問題の一つです。
コロナ禍により農業などの生産者は打撃を受け、また同時に支援活動も活発化しました。これにより、生産者の今について認識された方も増えてきています。しかし知っているようで実はあまり知られていない深刻な問題も少なくありません。
そこで今回は、生産者の今を知ることで、わたしたちの食を守るために家庭でなにができるかを考えてみましょう。

コロナ禍だけじゃない日本の農業を脅かしている問題

コロナ禍により、飲食店の時短営業や国内外からの旅行者の激減で、農産物の消費は落ち込み、食の生産者・生産地も大きな打撃を受けています。また、学校給食の停止で牛乳や野菜があまったり、魚介や肉などの行く先がなくなったりしたことは、報道でもたびたび取り上げられました。特に業務用の農産物は量も多いため、キャンセルは大打撃となり、数千キロの米が宙に浮くこともありました。

しかし、農業のピンチはコロナ禍だけが原因ではありません。根本的な問題として存在する、農業生産者の減少と高齢化、そして食料自給率の低さも深刻です。

1.農業生産者の減少と高齢化

農林水産省は、5年ごとに国内の農業生産者を対象にした「農林業センサス(農業版国勢調査)」を行っています。2020年の報告をみると、個人経営の農業生産者は、5年前に比べ約30万経営体(22.6%)減少。また、経営者が65歳以上の割合は69.8%となり、5年前に比べ4.9ポイント上昇しています。農業生産者は高齢化すると、離農したり、規模を縮小したりすることが多くなります。
さらに、農家の子が跡継ぎになることも減少しており、高齢化を加速させています。日本の農業、農産物の将来が心配になる報告といえるでしょう。

2.食料自給率

食料自給率とは、国内の食料消費量が国産品でどの程度まかなえているかを示す数値。日本の自給率は長期的に減少傾向で、1946年度は88%でしたが、1990年前後には50%を切り、2000年代になると40%前後で横ばい状態に。2017年度は38%まで下がっています。一方で、政府は2025年に45%まで引き上げることを目標に掲げています。
また、諸外国と比べても、日本の自給率は低いことがわかります。品目別にみると、米、いも、野菜、きのこの自給率は70~100%と高いですが、小麦、大豆、油脂は7~14%と低く、ほとんどを輸入に頼っています。また、肉類、卵、乳製品は、輸入飼料で飼育されたものを国産品とせずに計算すると、6~26%と低く、飼料の自給率という問題も見過ごせません。

日本と諸外国の食料自給率
(出典:農林水産省 世界の食料自給率)
グラフの自給率は、カロリーベース、生産額ベースの2つ。
カロリーベースは、国産食品のカロリーで、実際に必要なカロリーがどれだけまかなえているかを表している。生産額ベースは、1年に消費された食品の金額に対する国産食品の生産額の割合。カロリーベースのほうが生産額ベースより低くなる理由は、低カロリーな米、野菜などの自給率が高く、高カロリーな肉類、油脂などの自給率が低いため。

農業法人は5年で4,000社も増加!作って加工して販売する”新農業”にも注目

2020年の「農林業センサス」では、個人経営農家の減少と高齢化が進んでいる一方で、会社として農業をする農業法人は増加していることがわかりました。これらの農業法人を調べると、耕地面積は比較的大きく、売り上げも大きい傾向があり、農林水産省は、農業は法人化と大規模化が進んでいると分析しています。

農業法人は5年で4,000社も増えた!
農業法人農業個人経営

また、非農家の人が新しく農業を始めるケースも増えています。その理由のひとつは、農業法人の増加により雇用が増えたからです。サラリーマンのように農業を始める人が増えています。国は「農業次世代人材投資資金」という制度により、これから就農する人の研修や経営の資金を交付し、こうした動きを支援しています。求人・求職サイトにも、農業に特化したものが次々と生まれており、株式会社の農場、牧場からの求人が多数掲載されています。

さらに、自営で農業を始める人を応援する自治体も少なくありません。この動きによって、新規就農者がだんだん増えてきました。たとえば、神奈川県厚木市では、新規就農者認定制度により、就農希望者の支援、農地のあっせんを行っており、2009年~2021年に84人が新規就農しました。こうした取り組みにより、2015年には約50haあった遊休農地のうち、約20%の10haをキャベツや大豆の耕作地によみがえらせました。

これらに加え、農林水産省は「一次産業の六次化」という取り組みを行っています。生産者は生産するだけでなく、加工(二次産業)、販売(三次産業)も行うことで、産物に付加価値をつけ、雇用や収入を増やすことを目指すものです。農業を一次×二次×三次=六次産業化することで、新しい農業にするというわけです。
六次化で成功した例としては、山口県内のいちごジャム事業が、4年間で売上1.6倍、雇用者数1.3倍、原料の果実生産面積3倍に拡大したというケースもあります。

一次産業の六次化とは

国産農産物を守るためにわたしたちができること

農業の課題は、普段の生活では馴染みがないように感じられるかもしれませんが、実は日々の買い物をわたしたちが少し意識するだけでも大きな支援に繋がります。
例えば、国産食材を産地から直接購入する、旬の食材を食べる、また国の取り組みを積極的に知ることなど、できることはたくさんあります。
今日からでも始められる、未来の農業を守る取り組みに注目してみませんか?

  1. 1.産直ネット通販
    生産者と消費者を直接つなぐ販売サイトで食材を買うことで生産者の支援ができます。産地から直接届くので鮮度もよく、価格もお得。サイトによっては生産者と直接コミュニケーション取ることもでき、交流が楽しめることも。
  2. 2.アンテナショップ
    前項でご紹介した六次化によって生まれた商品や、産地直送食品などを買うことでその土地の生産者支援につながります。名物や季節によって限定品が並ぶこともあり、ネット通販ではできない試食や地元のスタッフとの会話ができるので、産地の魅力や取り組みをより肌で感じられます。
  3. 3.旬の食材や地元の食材を食べる
    季節外れの野菜や果物は輸入品も多くありますが、なるべく国産の旬の食材を取り入れることも大切。特に地産地消は、輸送に伴う二酸化炭素の削減に繋がります。
  4. 4.「#元気いただきますプロジェクト」(注1)
    農林水産省がコロナ禍の影響を受けた生産者を支援するために行っているプロジェクトで、対象品目の食品は、産直ネットショップ、大手ショッピングサイトなどを通じて買うことができます。
  5. 5.「フード・アクション・ニッポン」
    こちらも農林水産省が、自給率を上げるために推進しているプロジェクトで、各地の産物を使った商品を審査・表彰するアワードを毎年開催しています。アイデアと技が光る商品がさまざまで、ネットで購入することもできます。
    また、「ジャパンハーヴェスト」というイベントも毎年行っており、生産地や産物の紹介、収穫体験、料理教室などに参加することができます。

一人ひとりの行動で未来の食卓を守ろう

いかがでしたか?日本の農業を守る行動は、地球環境を守り、子どもの未来を守ることに繋がっています。
家庭でできることは小さいようですが、毎日食べる食材や買い物の仕方を少し見直すことで大きな支援になります。
「食品ロス削減(消費)」と「農業支援(生産)」は、わたしたちの生活に密接していることなので、ぜひ家族で積極的に取り入れましょう。

こちらもおすすめ!

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