節分は、古くから続く日本の伝統行事のひとつです。「鬼は~そと、福は~うち!」と豆まきや恵方巻を楽しむご家庭も多いのではないでしょうか。玄関に“いわし”を飾ったり、食べたりする地域もありますが、その理由はあまり知られていないようです。
そこで今回は、節分にまつわるお話から、成長期にも嬉しい“いわし”の栄養・調理のコツをご紹介します。
節分は一年を締めくくる大切な日
本来、節分とは季節の変わる節目の日、つまり季節のはじまりである「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の前の日のことを意味していました。なかでも大切にされてきたのが、「立春」(2月4日ごろ)の節分です。
旧暦では、春を一年のはじまりとしていたため、立春の前日の節分が一年を締めくくる日としてもっとも重要視されていたのです。
●どうして節分に豆をまくの?
昔は、季節の変わり目には邪気が入りやすいとされ、邪気払い行事が行われていました。
節分に豆をまくのは、諸説ありますが、穀物に宿る穀霊の力で邪気を追い払い、福を呼び込むとされてきたことや、「魔目(まめ)」「魔滅(まめつ)」に通じ、鬼の弱点である目に投げる(魔目)ことで魔を滅する(魔滅)ことに由来しているともいわれています。また、生の豆ではなく炒った豆をまくのは、災いの芽が出ないようにとの意味が込められているそうです。
●恵方巻を食べる意味って?
節分の日に「恵方巻」を食べるご家庭も多いでしょう。
恵方とは、その年の「良いことが起こる方角」や「歳神様がいるとされる方角」のことで、一年の福を願い、恵方に向かって太巻き寿司を切らずに無言で食べるのが習わしです。
具材はとくに決まりはありませんが、七福神にちなんで、かんぴょう・きゅうり・椎茸など、7種類を入れるのが一般的です。各ご家族で好きな具材を選んでみるとよいでしょう。
節分に“いわし”も飾って鬼退治!
節分の日の行事として、豆まきや恵方巻が広く知れわたっていますが、地域によっては「やいかがし」または「柊鰯(ひいらぎいわし)」と呼ばれているものを、家の軒下や門などに魔よけとして飾る習慣もあります。
そもそも、やいかがし(焼嗅がし)とは、「焼いて嗅がせる」の意味で、ヒイラギのトゲで鬼の目を刺し、焼いた“いわし”の臭いで鬼の侵入を防ぐためのもので、昔からトゲのあるものや臭いの強いものは、魔よけの力があると信じられてきました。やいかがしは、それらを組み合わせて、魔よけの効果を強めたものとされます。
一般的にやいかがしといえば、ヒイラギの枝に“いわし”の頭を刺しますが、竹や山椒の枝、玉ねぎ、にんにく、らっきょうなどを用いる地域もあるようです。
“いわし”は脳の活性化を助けるDHA・EPAが豊富で受験生にもおすすめ!
“いわし”の臭いや煙で鬼を追い払うだけでなく、無病息災を願って“いわし”を食べる習慣もあります。さらに“いわし”は、栄養豊富な青魚でもあります。
体を作るたんぱく質をはじめ、体内で合成できず、食事からの摂取が不可欠な必須脂肪酸の「DHA (ドコサへキサエン酸)」や「EPA (エイコサペンタエン酸)」が豊富に含まれているのです。
とくにDHAは、脳をはじめ神経組織に多く含まれる重要な栄養素のひとつ。脳の情報伝達機能にも関わっており、毎日勉強に励む受験生には、積極的に摂ってほしい栄養素といえます。
また、EPAは、DHAと似たような働きを持ちますが、血液・血管の健康維持作用で注目され、健康や脳の機能を保つためにも役立つとされています。
そのほかにも、“いわし”には「カルシウム」や、カルシウムの吸収を助ける「ビタミンD」、そして全身に酸素を運ぶ赤血球の材料となる「鉄分」など、元気な体づくりのために欠かせない成分がたくさん含まれています。“いわし”は、お子さまやご家族の健康維持にもおすすめの食材なのです。
“いわし”をおいしく食べる調理のコツ!
“いわし”は、栄養が豊富なのでお子さまだけではなく、大人も積極的に食べていただきたい食材です。しかし、人によっては、“いわし”の魚臭さや小骨が気になる人も。せっかく栄養豊富な“いわし”料理を作っても、食べてくれなかったら残念ですよね。そこで、“いわし”を食べやすくする調理のコツをご紹介します。
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●新鮮なものを選ぶ
“いわし”を選ぶときは、目が澄んでいて、背に光沢があるものを選びましょう。また、鮮度が落ちるスピードが早いため、新鮮なうちに手早く調理するのがポイントです。
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●水気を拭き取る
“いわし”に限らず、魚の臭みは水分に溶け出ることから、調理前にキッチンペーパーでやさしく水気を拭き取るようにしましょう。塩をふってしばらくおくと水分が出やすくなると同時に、身を引き締める効果もあります。
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●下味を付ける
しょうゆや味噌などの調味料で下味を付けると、臭みがやわらぎます。
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●小骨を取り除く
小骨があると食べにくい場合は、骨抜きで丁寧に取り除いてあげるとよいでしょう。また、小骨が気になりにくい「つみれ」にするのもおすすめです。
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●熱湯をかける
サッと熱湯をかけると、臭みや雑味が抜けて煮物や汁ものなどがおいしく仕上がります。
“いわし”を使ったおすすめメニュー
続いて、“いわし”を使ったおすすめのメニューをご紹介します。節分の日の献立の参考にしてみてください。
●濃いめの味付けで食べやすい!“いわし”のかば焼き
家族が喜ぶメニューを作りたい!そんなときは、味付けを工夫してみましょう。子どもであれば、トマトやカレーで味付けをしたり、照り焼きなどにしたり、今回ご紹介するかば焼きのように濃いめの味付けにすると食べやすくなります。
【作り方】
- ①“いわし”は手開きしたものを準備し、塩をふって、しばらくしたらキッチンペーパーで水気を拭き取っておきます。
- ②次に両面に片栗粉をまぶし、サラダ油を熱したフライパンで、皮目から焼き、焼き色が付いたらひっくり返して裏面も同様に焼きます。
- ③“いわし”に火が通ったら、しょうゆ・みりん・酒・砂糖を加えて煮からめたら出来上がりです。
●だんご状で魚を食べやすく!“いわし”のつみれ入りスープ
小骨が苦手な場合は、“いわし”をだんご状にしたメニューを選ぶのもよいでしょう。野菜と一緒にスープにすれば、野菜を摂りつつ、汁に流れ出たDHA・EPAなども摂取がしやすい1品になります。
【作り方】
- ①“いわし”は三枚おろしにしたものを、キッチンペーパーで水気を拭き取り、包丁の背で叩いて、ボウルにつみれの材料(みじん切りにした長ねぎ・すりおろししょうが・片栗粉・塩)と混ぜ合わせます。
- ②鍋にだし汁・酒・みりん・しょうゆ、そして食べやすく切った大根・にんじんなどのお好みの野菜を入れ、沸騰したら、スプーンで丸く整えながらつみれを作って入れていきましょう。
- ③具材に火が通ったら、輪切りにしたねぎを入れて、再度火を通したら器に盛って完成です。ぜひ、“いわし”のうま味も溶け込んだスープをお楽しみください。
春を迎える「節分」で今年も素敵な年に!
節分が終わると暦の上では春です。季節の変わり目は、気持ちをあらためる良い機会でもあります。豆まきや恵方巻、そして“いわし”を飾ったり食べたりして、この一年も良い年になるよう、運気を呼び込んでいきましょう。
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執筆者プロフィール
横川仁美(よこかわひとみ)
食と健康・美容をつなぐ「smile I you」代表。
健康食育シニアマスター、管理栄養士、マイ穀スタイリスト、ヘルスケア栄養ライター
ママや子どもの健康サポート、オンラインでの食カウンセリングを中心に活動中。