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カルシウムだけじゃない!日本乳業協会に聞いた「牛乳」の歴史や魅力とは

カルシウムだけじゃない!日本乳業協会に聞いた「牛乳」の歴史や魅力とは

私たちが日頃飲んでいる「牛乳」。日本ではいつから飲み始められたか知っていますか?
牛乳の歴史は諸説ありますが、約1万年前に始まり、日本でも飛鳥時代には飲まれていたとされています。カルシウムやたんぱく質、ビタミンなどをバランスよく含み、高い栄養価を持つ牛乳は、当時は薬とされ、大変貴重なものでした。
日本で牛乳が広まった歴史や、生産量の移り変わり、そして目的に合わせたおすすめの飲み方について、牛乳をよく知る専門家、一般社団法人日本乳業協会にお話を伺いました。

「牛乳が余っている!」「スーパーからバターが消えた」
牛乳はなぜピンチになる!?

昨年、新型コロナウイルスの影響で学校が休校となり、給食で使われなくなった牛乳が余っているというニュースがありました。一方で、「スーパーからバターが消えた」と報じられたことがあるように、一時的にバターの供給不足になってしまったケースもあります。なぜ牛乳(乳製品)は余ったり、足りなくなったりしてしまうのでしょうか。

生乳の生産量は1年を通して一定ではありません。牛は暑さに弱く、夏バテをすることもあって夏季は搾乳量が減ってしまいます。主に日本で乳牛として飼育されているホルスタイン種は冬の寒さに強いため、冬季は搾乳量が増加します。

しかし、消費者が飲む量は生産量と反比例し、夏は増えて冬は減ります。牛乳は常に需要と供給のアンバランスを抱えているのです。

そして多くの牧場では1日2回搾乳しており、搾乳しないと牛が病気になってしまうことに。「給食が止まってしまったから、今日は乳搾りをやめよう」ということはできません。ですから、飲用の牛乳は需要と供給の変化によって余ったり、足りなくなったりするのです。

それならば、余った分をバターなどの加工品に使用すればいい、と考えるかもしれませんが、生乳は1年間のおおよその生産量が予想できるので、それをもとにあらかじめ「牛乳用」「バター用」などと使い道が割り振られています。さらにバターは「家庭用」「業務用」に分かれますが、それぞれ工場で生産できる量には限りがあります。各工場では設備を効率よく最大限に利用して、年間で予定している量のバターを作れるようになっているため、「バターが足りない!」や「牛乳が余っている」となったときにも、急に「家庭用バター」にだけ注力し大量生産をすることができないのです。

ペットボトル飲料の台頭で消費量が減少!?
牛乳の生産量は1994年がピーク

日本では、戦後1951年に「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」が公布され、牛乳類に関するさまざまなルールが決められました。そのころの年間生産量は約9万トン。

それが東京オリンピックが開催された1964年には、約157万トンに急増。その背景には学校給食で牛乳が提供されるようになったことがあります。その後1リットルの牛乳パックが登場し、スーパーやコンビニでの販売が始まり、家庭での宅配も普及し、1994年に約500万トンまで増え続けましたが、それをピークに減少傾向に。2019年は約365万トンで、ピーク時から約3割減少しています。それでも最近は減少傾向が落ち着きつつあり、年間生産量はほぼ横ばいです。

牛乳類の生産量が減少した理由はいくつかありますが、少子高齢化が進み、学校給食で牛乳を飲む子どもが減っていることや、ペットボトル飲料が増加し、コンビニや自動販売機など買う場所も多様化したことで、“飲み物”の選択肢が増えたことなどが挙げられます。

また酪農家の高齢化による廃業も多く、乳牛の飼育数自体も減り、生乳の生産量そのものも減少しています。特に北海道以外の都府県での生産量の減少が顕著に目立ちます。

日本で牛乳が飲み始められたのは飛鳥時代
江戸時代に近代酪農の礎が築かれる

では牛乳はいつごろから、愛飲されるようになったのでしょうか。古くさかのぼり、牛に限らず「動物の乳」という視点でみると、今から1万年前ほど前に羊やヤギの乳が飲み始められたと言われています。8000年ほど前になると、西アジアでそれらの動物の家畜化が始まり、世界中に広まっていきました。

日本で牛乳が飲み始められたのは飛鳥時代の645年。大化の改新が始まったころで、孝徳天皇に百済(くだら)からきた帰化人の子孫、善那(ぜんな)が献上したことが始まりといわれています(新撰姓氏録より)。つまり孝徳天皇が、日本で初めて牛乳を飲んだ人というわけです。高い栄養価を持つため、「牛乳は飲む薬だ」と話していたという記録もあるそうです。

平安時代には皇族から貴族にも牛乳飲用は広まっていきましたが、その後世の中は戦国時代に。乳を出す牛よりも戦で使う馬のほうが重宝されるようになり、牛乳は次第に飲まれなくなっていきました。

再び日本の歴史に牛乳が登場するようになるのは江戸時代。1727年に8代将軍徳川吉宗がオランダ人に馬の医療用として牛乳の必要性を教えられ、インドから牛3頭を輸入。現在の千葉県南房総市で飼育が始められました。これが近代酪農のスタートとされています。とはいえ、当時はまだまだ牛乳の希少価値は高く、庶民には手の届かないものでした。

しかし開国をして外国人が住むようになり、牛乳の必要性が高まっていきます。1866年、前田留吉がオランダ人から牛の飼育や搾乳を習い、横浜に牧場を開いて牛乳の販売を始めました。明治時代に入り前田のつくった牛乳は天皇にも献上され、1871年に「天皇が毎日2回ずつ牛乳を飲んでいる」と新聞や雑誌で伝えられると、それを読んだ国民の間に牛乳の飲用が広まっていったのです。

カルシウムだけじゃない!
牛乳は体を作る栄養価の高い食品

このように牛乳は昔、「薬」として飲用されていたほど、栄養価の高い食品です。牛乳と言えば「カルシウム」というイメージが強いと思いますが、たんぱく質や脂質といった生命維持に必要な栄養素も摂取でき、ビタミン・ミネラルも豊富です。

●牛乳の主な栄養素

<たんぱく質>
体内で合成できない必須アミノ酸をバランスよく含む、良質のたんぱく質です。

<カルシウム>
牛乳のカルシウムは、たんぱく質の作用で吸収が良いとされています。牛乳中のカルシウムとリンの比率が1:1となっており、小魚や野菜類に比べて吸収率が高いのも特徴の1つです。

<ビタミンA>
皮膚や粘膜を健康に保ち、風邪などの病気に対する抵抗力を強めます。

<ビタミンB2>
多くの代謝に関わっています。特に成長期に必要なビタミンであり、 “美容ビタミン”とも言われ、ニキビや肌荒れの治療薬にも使われています。牛乳コップ一杯(200ml)に1食に必要な量の約25%が含まれます。

牛乳は脂質を含むため「太りやすい」と誤解されがちですが、必ずしもそうではありません。牛乳の脂質は4%ほど。牛乳パックに書いてある「3.6」「3.8」といった表示は、製品に含まれる脂質のパーセンテージを表しています。コップ1杯(200ml)は126kcalで、他の同等のカロリーの食品と比較して豊富な栄養素を含んでいるのが牛乳です

運動のあと、熱中症の予防、睡眠の質の改善……
目的別おすすめの飲むタイミング

日本人のカルシウムの摂取量は、男女問わずどの年代の人も不足していると言われており、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品を1日3回もしくは3品摂取してほしいと思います。基本的に牛乳はいつ飲んでも構いませんが、目的別におすすめのタイミングを紹介します。

●牛乳の主な栄養素

<運動のあとに>
たんぱく質を含むため筋肉量を増やしてくれたり、汗で失われたミネラルを補給したりすることができます。運動後30分以内に飲むのがおすすめ。

<熱中症の予防に>
牛乳を飲むことで血液量が増え、体温調整がしやすくなります。運動のあと同様、汗で失われがちなミネラルの補給にもぴったりです。

<睡眠の質の改善に>
牛乳には、睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」の原料となる「トリプトファン」が含まれています。朝飲むことで、夜に睡眠ホルモンが分泌されるのを促します。

<骨を丈夫にしたい>
どの時間帯に飲んでもいいのですが、特に夜寝ている間にカルシウムの骨形成が盛んにおこなわれるとされ、骨を丈夫にしたいなら寝る前に飲むのが特に良いでしょう。疲労回復にも効果があります。

牛乳は温度の違いや他の食品を加えても栄養が変わらないので、冷たいまま飲んでもホットにしてもOKです。リラックスしたいときはホットで、運動のあとは冷えた牛乳をゴクゴクと……など、気分やシチュエーションで自由に選びましょう。

でも、牛乳の味や香りが苦手……という人もいます。そういう場合は、100%のフルーツジュースやサイダーと混ぜるのもおすすめです。ぶどう、オレンジ、パイナップルなど、お好きなフルーツジュースと混ぜると、ほどよいとろみがついて飲みやすくなります。大人ならお酒と合わせるたりするのも良いでしょう。

“あん”と混ぜてホットでもアイスでも楽しめる「あんこ牛乳」や、みそ汁に入れるなど、和の食材とも意外と相性がよく、味噌や醤油とも合いますので、シチューなど洋風以外の料理にもぜひ使ってほしいと思います。

牛乳は温度管理が命
できるだけ開封後早めに飲み切る

牛乳は製造から賞味期限までの期間が短い食品です。ただし賞味期限は10℃以下で冷蔵保存し、未開封の場合においしく飲める期限なので、開封後は無効となります。購入後はできるだけ早く冷蔵庫に入れ、開封後は賞味期限に限らず、早めに飲みましょう。牛乳パックは正しい開け方で開けてコップに注いだらフタはすぐに閉じ、開けっ放し・出しっ放しは厳禁です。

近年、地震や台風などの災害により酪農業がダメージを受けることも少なくありません。安心で安全な日本の牛乳を守っていくためには、まずはみなさんの健康な体づくりの1つとして牛乳を毎日おいしく飲んでいただくこと。そして牛乳を取り巻く環境にも、大きな関心を寄せてほしいと思います。

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