寒い冬に、暖かい部屋の中で食べる果物といえば、“みかん”を想像する方も多いのではないでしょうか?最近はコタツがあるご家庭は少なくなってしまいましたが、コタツで“みかん”を食べるのは冬の風物詩ともいえるほど、日本人と“みかん”の関係は深いものです。
今回は、そんな私たち日本人にとって馴染み深い“みかん”に関する豆知識や、含まれている栄養素、冬の体調管理にも役立つおすすめの食べ方について解説します。
日本人と“みかん”の深〜いつながりとは?
日本人と“みかん”の関係は古く、はじまりは1,000年以上も昔にさかのぼります。日本最古の史書である『古事記』によると、天皇の命を受けた使者が、不老長寿の果物として中国から“橘”(現在の“みかん”の原形)を紀州(和歌山県)に持ち帰ったと記されています。
その後、日照時間が長く、暖かい地域で育つことから、紀州をはじめ、肥後(熊本県)や駿河(静岡県)など気候が温暖な地域で“みかん”の栽培が盛んになり、特産物として全国に知られるようになりました。
また、今私たちが食べている品種の多くは、中国の温州から伝わった“みかん”が変異したといわれる“温州みかん”と呼ばれ、400年ほど前の江戸時代から広まったといわれています。江戸時代は家名の存続が重視されていたことから、種の無い“温州みかん”は避けられていたこともあり、当時は今の“みかん”よりも小さな“紀州みかん”(中国原産)がほとんどでした。しかし、明治時代を迎えると、“温州みかん”の食べやすさと玉の大きさが人気となり、広く親しまれるようになったそうです。
●鏡餅の上には“みかん”ではなく、橙をのせていた!?
お正月を祝う飾りの鏡餅の上に、小さな“みかん”がのっているのを見たことはありませんか?実は、もともと鏡餅の上にのせるのは“みかん”ではなく、実が落ちずに年を越すことから縁起がよい果物とされている、橙(だいだい)というかんきつ類でした。橙の響きから「代々家が繁栄するように」という願いが込められ、橙をのせて飾るのがお正月の風習として広まりましたが、橙は出荷数も少ないことから地域によっては手に入りにくく、今では同じかんきつ類で身近な小さな“みかん”を使うことが増えています。本来は“みかん”ではなかったなんて、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
●日本人はどのくらい“みかん”を食べているの?
総務省の「家計調査」のデータによると(注1)、令和2年のデータで日本人が最も多く食べている果物はバナナ、次いでりんご、“みかん”となっています。このデータからも“みかん”は日本人にとって馴染み深い果物だということがわかりますが、平成10年くらいまでは、“みかん”、りんご、バナナの順で、“みかん”が1番人気の果物でした。
“みかん”農家の高齢化や、後継者不足などの問題から生産量そのものが減ってきたこと、また輸入量も多く、比較的年間を通じて手に入れやすいバナナなどに比べて“みかん”は国産の割合が高く、旬の季節が限定されるなどの理由から、“みかん”の1世帯(二人以上の世帯)あたりの年間の購入数量は、平成10年の20,946gから令和2年では9,974gと、約半分にまで減ってしまいました(注1)。
冬の体調管理にも役立つ“みかん”の栄養素とその働き
“みかん”には、健康のために積極的に摂りたいさまざまな栄養素が含まれています。そのなかでも注目すべき栄養素とその働きをご紹介します。
●ビタミンC
皮膚や細胞のコラーゲンの合成に必須の栄養素(水溶性のビタミン)で、体内でつくれないため、食事で必ず摂りたい栄養素のひとつです。また、ビタミンCは、体内で活性酸素を消去して細胞を保護する抗酸化作用があり、心臓血管系の疾病など生活習慣病予防にも役立つ可能性があることが注目されています。
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をみると、成人のビタミンCの推奨摂取量は、1日100mgとされています(注2)。“温州みかん”1個(100g)には35mgほどビタミンCが含まれているため、1個で1日の1/3ほどを摂ることができます(注3)。
●食物繊維
食物繊維とは、小腸で消化・吸収されずに大腸まで達する難消化性成分のことをいいます。腸内環境を整える働きはよく知られていますが、そのほかにも食後の血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、肥満・生活習慣病予防などに役立つ多くの働きが明らかにされています(注2)。
食物繊維は、現代の多くの日本人が不足しているという報告もあり、日々の食生活のなかで積極的に摂りたい栄養素でもあります。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき1日あたりの推奨摂取量は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上とされています(注2)。“温州みかん”1個(100g)には、1gほどの食物繊維が含まれていることから、おやつ代わりに食べるとよいでしょう(注3)。
●β-クリプトキサンチン
“温州みかん”に特徴的に多く含まれているカロテノイド色素の一種。体内でビタミンAに変換される、プロビタミンAとしての機能を持っているほか、循環器系疾患、糖尿病などの生活習慣病に対する予防効果など、新たな生体調節機能が明らかにされてきています(注4)。
“温州みかん”1個(100g)には、1mgほどのβ-クリプトキサンチンが含まれているようですが、どのくらい“みかん”を食べたらこれらの効果が期待できるのかは、まだ明らかにされていません(注4)。しかし、“みかん”を食べる習慣がある日本人の血中β-クリプトキサンチン値は、欧米人と比べて明らかに高い傾向があることから注目を集め、研究が進められているため、今後の報告を楽しみに待ちましょう。
体がよろこぶ!“みかん”のおすすめの食べ方
手軽に食べられて栄養も豊富な“みかん”。それらの栄養をより効率的に摂取するための食べ方をご紹介します。
“みかん”は1日何個まで食べてOK?
健康で豊かな食生活の実現を目的に、農林水産省と厚生労働省によって策定された「食事バランスガイド」では、1日あたりの目安にしたい果物の量として、“みかん”はおよそ2個とされています。もちろん、あくまでも目安なので必ずしもこの通りに守らなくてはならないものではありませんが、どんなにおいしくて体によい栄養素が摂れる食品だからといっても、一度に食べ過ぎてしまうと逆に悪影響を及ぼす可能性もあるため、食べ過ぎないように気をつけましょう(注5)。
白いすじや袋は食べたほうがいい!
白いすじや袋(じょうのう)には、先ほど紹介した食物繊維が豊富に含まれています。中身の粒(砂じょう)だけを食べたときに比べて、約2倍もの食物繊維が摂れるので、健康を意識した際にはすじや袋も食べたほうがお得だといえるでしょう (注3)。
手軽でおいしい“みかん”を食べて寒い冬を元気に過ごしましょう
私たち日本人にとってとても身近な存在である“みかん”に改めて着目をしてみると、意外と新たな発見もあったのではないでしょうか。さまざまな魅力を深く知ると、さらに愛しく感じてきますよね。
おいしいだけでなく、ビタミンCを豊富に含む“みかん”。スナック菓子や甘いお菓子を間食にしている習慣がある方は、ぜひ冬の旬の時期には、手軽に楽しめる“みかん”を日々のおやつに取り入れ、より健康的な食生活を目指してみてはいかがでしょうか?