ハロウィーンの時期になると街中で見られる“かぼちゃ”の飾り。今ではおなじみの光景ですが、なぜ“かぼちゃ”が使われているのかご存知ですか?今回は、ハロウィーンと“かぼちゃ”の関係からひもとく文化の違いから、“かぼちゃ”の品種と特徴や栄養素、特に子どもの成長期に重要な炭水化物やビタミンB6の効果的な摂り方をご紹介します。
ハロウィーンと“かぼちゃ”の関係とは?
ハロウィーンは「死者が帰ってくる」「かがり火をたく」など、日本のお盆との共通点が多く、「西洋のお盆」とも言われています。その一方で、「悪霊を追い払う」というお盆にはない風習があることをご存知でしょうか?実は、ハロウィーンでよく見る“かぼちゃ”の飾りもそのひとつ。「ジャック・オー・ランタン」と呼ばれる“かぼちゃ”のランタンにかがり火を灯すことで、悪霊を怖がらせ追い払う意味があるそうです。
「ジャック・オー・ランタン」は一説によると、アイルランドの古い伝説が発祥とされています。その内容は、生前悪事ばかり働いたジャックという男が、死後天国にも地獄にも行けず、かぶをくりぬいたランタンを持ってこの世をさまよったというもの。この話から、もともとはかぶのランタンが飾られていましたが、その後この風習がアメリカに伝わると、収穫量が多い“かぼちゃ”で代用されるようになったと言われています。
日本で手に入る“かぼちゃ”の種類や特徴を比べてみよう!
日本で手に入る“かぼちゃ”は主に、「日本かぼちゃ」「西洋かぼちゃ」「ペポかぼちゃ」の3種類が存在します。ここでは、それぞれの代表的な品種や特徴を比較してみましょう。
<代表的な種類>
- ●日本かぼちゃ
“かぼちゃ”の語源となった品種。中央アメリカから南アメリカを原産とし、1500年代にポルトガル人がカンボジアの産物として日本に持ち込んだことから、“カンボジア”がなまって“かぼちゃ”と呼ばれるようになりました。代表的な品種には「日本かぼちゃ(黒皮かぼちゃ)」「バターナッツ」などがあります。
- ●西洋かぼちゃ
中央アメリカや南アメリカを原産とする品種。日本に伝わったのは19世紀ごろで、本格的に栽培されるようになったのは明治時代以降とされています。代表的な品種は「黒皮栗かぼちゃ」や、手のひらサイズの小さい「坊ちゃんかぼちゃ」など。
- ●ペポかぼちゃ
北アメリカ南部が原産で「西洋かぼちゃ」よりも少し遅れて日本に入ってきた品種。生のまま食べられる「ズッキーニ」や「そうめんかぼちゃ(金糸うり)」、ハロウィーンのランタンに使われる観賞用の「おばけかぼちゃ」などが有名です。
<見た目の特徴>
「日本かぼちゃ」は濃緑や黒色の果皮を持ち、溝は深くてゴツゴツしています。
「西洋かぼちゃ」は緑や深緑色の果皮のものが多く、溝が浅いのが特徴です。
「ペポかぼちゃ」は種類が多様で、流通しているものは黄緑や緑の果皮が一般的ですが、中には黄色やしま模様、細長いもの、UFO型など、ユニークな色や形の品種が存在します。
<味の特徴>
「日本かぼちゃ」は水分が多く、ねっとりした食感とあっさりとした甘さが特徴で、煮物などによく使われます。
「西洋かぼちゃ」は、加熱するとホクホクした食感が人気。中をくり抜いてプリンやグラタンにするなど、見た目も華やかでハロウィーンのパーティ用メニューにもぴったりです。
「ペポかぼちゃ」の食用かぼちゃは、生でも加熱しても食べることができます。例えば「ズッキーニ」は生で食べることができ、「そうめんかぼちゃ」は輪切りにして茹でると、あっさりとした味わいに。めんつゆや三杯酢と和えたり、炒め物やサラダにしたりして食べるのがおすすめです。
成長期にも欠かせない“かぼちゃ”の栄養素と期待できる効果
近年、子どもの便秘が問題視されており、厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準」では、2015年版から子どもの食物繊維の目標量が新たに設定されました。(注1)また、成長期には必要なエネルギー量が多く、パンや米だけでなく、副菜からも炭水化物を摂ること、たんぱく質の代謝を助けるビタミンB6を摂取することが大切だと言われています。
食物繊維や炭水化物が豊富で、ビタミンB6も含まれている“かぼちゃ”は成長期の強い味方。“かぼちゃ”の代表的な栄養素と成長期に必要な栄養素を紹介します。
●“かぼちゃ”の代表的な栄養素とその働き
- ・ビタミンA
目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあるビタミンです。
- ・ビタミンC
皮膚やコラーゲンの合成に関わっているビタミンです。
- ・ビタミンE
脂質の酸化を抑え、血管を健康に保つほか、LDLコレステロールの酸化を抑制したり、赤血球の破壊を防いだりする作用も。細胞の酸化を防ぐため、老化防止にも効果があります。
- ・葉酸
ビタミンB12と一緒に赤血球を作るミネラル。また、DNAを作るサポートを行います。
- ・カリウム
ミネラルの一種で、塩分を排出する働きがあります。
- ・モリブデン
「血のミネラル」とも呼ばれ、造血に関わるほか、体内の有害物質を分解します。
●“かぼちゃ”に含まれる成長期に特に大切な栄養素
- ・炭水化物
生命維持のほか、成長期の体が発育するためのエネルギー源です。主食のほか、副菜でも摂ることが大切です。
- ・食物繊維
便通を促す働きをすることから、食事量の増える成長期に重要な栄養素です。
- ・ビタミンB6
“かぼちゃ”に含まれるビタミンB6は、量は多く含まれていないものの、成長期に体を作るたんぱく質の代謝を助ける働きがあり、たんぱく質と一緒に食べると効率的です。
おいしい“かぼちゃ”の選び方・食べ方・調理のコツ!
●おいしい“かぼちゃ”の選び方
果皮の表面がしっかり乾燥し、ヘタの切り口がコルク状になっているのは、糖度が高い“かぼちゃ”の印です。また、熟した“かぼちゃ”の種はふっくらしているものが多いことから、もしもカットされたものを買う場合は、タネを見て選ぶとよいでしょう。スーパーや八百屋で参考にしてみてください。
●栄養士おすすめの食べ方
“かぼちゃ”に含まれるビタミンB6は水溶性ビタミンのため、スープにすることで無駄なく栄養を摂取することができます。ビタミンB6にはたんぱく質の代謝を助ける働きもあり、お肉の入ったポトフや、豆腐の味噌汁と一緒に食べるとよいでしょう。
また、炭水化物は成長期において重要なエネルギー源となるため、主食のほか、副菜でも摂ることが好ましいとされています。主食にごはんや麺・パンが並んでいる場合でも、炭水化物が豊富な“かぼちゃ”のおかずを一品プラスするのがおすすめです。
例えばお肉や魚料理のときに、電子レンジで加熱した“かぼちゃ”や薄切りにして焼いた“かぼちゃ”を添えたり、ツナやミックスビーンズ、チーズなどと合わせた“かぼちゃ”サラダ(ポテトサラダの“かぼちゃ”バージョン)を副菜として食べることで、栄養を効率よく摂取することができます。
●調理のコツ!
“かぼちゃ”の皮は栄養豊富なため、剥かずに調理するのがおすすめです。ただし、煮物は皮をところどころ剥くことで味が染み込みやすくなります。煮崩れを防ぐには、しっかり面取りをしてから炊きましょう。
“かぼちゃ”は1年中手に入る身近な野菜であり、子どもの成長も助けてくれる栄養が豊富な野菜です。ハロウィーンの時期が終わっても、積極的に摂りたいですね!
- 【参考文献】
- (注1) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
-
プロフィール
野口 知恵(のぐち ちえ)
管理栄養士、野菜ソムリエ上級プロ
和食文化継承リーダー(農林水産省)、食育仕事人(近畿農政局)
大学では食物栄養学部卒、大手食品メーカーで企業へのメニュー提案や商品企画を経て、独立後は講演やレシピ開発、執筆、メディア出演などを通じて「野菜・果物× 健康×栄養=笑顔」を伝えている。