春から、大学生や社会人として「新生活」を迎える方も多いと思います。親御さまは、独り立ちしていく我が子をみて、嬉しい反面、「新しい環境で上手くやっていけるかな?」「ちゃんとごはんを食べられるかな?」と気になることも多いのではないでしょうか。
「カモンハウス会員」のみなさまにご協力いただきました、第7回みんなのオープンデータ「“新生活の食事”大調査!」 の結果でも、「栄養が偏りそう」「自炊が不慣れ」という回答が多く寄せられました。
そこで今回は、食事からお子さまの「新生活」を応援!“一人暮らしの食事情”から、“そろえておくと役立つおすすめの食材”、“料理初心者でも簡単に作れるメニュー”などをご紹介します。
一人暮らしの食事情ってどんなもの?
主に20代は、大学生や社会人として自立をする一方、生活環境の変化による食生活が乱れやすくなります。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査(令和元年)」の結果によると、野菜摂取量の平均値 280.5 gに対して20~29歳の男性の野菜の平均摂取量は233.0g、女性212.1g と、「健康日本21(第2次)」における成人1日あたりの目標量である 350 g 以上に達していません(注1)。
この値は、次に低い値である40~49歳の男性253.0gよりも20g、30~39歳の女性223.2gよりも11g低い値となっています。
また、農林水産省の「食育に関する意識調査報告書(令和3年)」における朝食摂取頻度においても、朝食を「週に2~3日食べる」あるいは「ほとんど食べない」と答えた20~29歳の男女は27.1%と、他の年齢層よりも高い値でした(注2)。
朝食を摂らないと、エネルギー不足によって集中力や思考力が低下し、特に午前中の勉強や仕事がはかどらない、さらには疲れやすくなるといった体調不良の原因にもなりやすいため、きちんと食べることが大切です(注3)。
特に偏りがちな栄養素と食生活で意識したいこと
「国民健康・栄養調査(令和元年)」と「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに、特に20代が不足しやすい栄養素をピックアップしてみました。(注1,4)。
<推奨量と実際の摂取量との比較>
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男女計 |
男性 |
女性 |
実際の摂取量 (20-29歳) |
推奨量 (18-29歳) |
実際の摂取量 (20-29歳) |
不足量 |
推奨量 (18-29歳) |
実際の摂取量 (20-29歳) |
不足量 |
ビタミンA |
449μg | 850μg | 451μg | -399μg | 650μg | 447μg | -203μg |
ビタミンC |
62mg | 100mg | 62mg | -38mg | 100mg | 62mg | -38mg |
カルシウム |
435mg | 800mg | 462mg | -338mg | 650mg | 408mg | -242mg |
鉄 |
6.8mg | 7.5mg | 7.4mg | -0.1mg | 6.5mg/ 10.5mg月経なし/月経あり | 6.2mg | -0.3mg/ -4.3mg月経なし/月経あり |
食物繊維 |
16.0g | 21g以上 ※目標量 | 17.5g | -3.5g | 18g以上 ※目標量 | 14.6g | -3.4g |
参照:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
●ビタミンA(β-カロテン)
皮膚や粘膜の健康を助けます。緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンは、体内で必要な分だけビタミンAに変換されます。ビタミンAの1日あたりの推奨量は18〜29歳の男性で850μg、女性で650μgです。実際の20~29歳の平均摂取量は約449μgと、男性で400μg近く推奨量を下回っています。
※μg=1mgの1000分の1
●ビタミンC
皮膚や骨を構成するコラーゲンの合成に関わっています。ビタミンCの1日あたりの推奨量は成人で100mgに対し、実際の20~29歳の平均摂取量は約62mgです。約40mg近く不足しています。
●カルシウム
骨や歯を構成する重要な栄養素です。カルシウムの1日あたりの推奨量は、18〜29歳の男性で800mg、女性で650mgに対し、実際の20~29歳の平均摂取量は約435mg。推奨量よりも約 200~400mg少ない状況です。
●鉄
血液中の赤血球の材料となり、全身に酸素を運ぶ役割があります。鉄の1日あたりの推奨量は18〜29歳の男性で7.5mg、女性で10.5mg(月経あり)と、女性は男性よりも多くの鉄分が必要です。しかし、実際の20~29歳の平均摂取量は約6.8mg。特に女性の値は推奨量よりも下回っていることがわかります。
●食物繊維
腸壁を刺激して、腸のぜんどう運動を促す働きや糖質や脂質の吸収を緩やかにする働きがあります。1日あたりの摂取目標量は、成人男性21g以上、成人女性18g以上です。実際の20~29歳の摂取量は平均で1日あたり約16gと、目標量を下回っています。
いずれも体に必要な栄養素ですが、前述したように朝食欠食や野菜不足など、さまざまな原因で不足気味になっています。そこで養いたいのが食事の自己管理能力、健康に関する望ましい食習慣を身につけ、体に必要な栄養を含む食品をしっかり選ぶ力です。そのためにまずは、次のようなことから意識してみましょう。
一人暮らしで朝から食事を整える2ステップ
- 【ステップ1】手軽に食べられるものをそろえておこう!
忙しいときや食欲がわきづらいときでも、1品でも何か口にする習慣をつけましょう。睡眠中に低下した体温を上げ、体を目覚めさせてくれます。特に忙しい朝は、調理いらずですぐに食べられるものがおすすめです(注5)。
例: おにぎり、サンドイッチ、ヨーグルト、牛乳、バナナ、野菜ジュースなど
- 【ステップ2】食事内容を充実させましょう!
食べる習慣がついてきたら、主食に汁物やサラダなど、品数を増やしていきましょう。まずは2品から!そして、3品、4品と少しずつ主食、主菜、副菜、汁物を意識して増やしていくとよいでしょう。
<理想の朝ごはんスタイル>
- ● 主食:ごはん、パン、めん類など
- ● 主菜:肉、魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆)が含まれているおかず
- ● 副菜:野菜、きのこ、海藻類が含まれているおかず
- ● 汁物:味噌汁、スープなど
前日の遅い時間に食事を摂ると、翌朝に食欲がなくなり、朝ごはんが食べられない原因になります。さらに、寝ている間も胃や腸が働き睡眠不足にもつながるので、就寝2~3時間前には食べ終わるようにしましょう。どうしてもお腹が空いて眠れない場合は、低脂質で消化にやさしい雑炊やスープ類がおすすめです(注5)。
一人暮らしにおすすめ!そろえておくと便利な食材・調理器具リスト
一人暮らしは、自分のペースで過ごせる反面、身の回りのことをすべて自分でしないといけません。そんなときに栄養面でも経済面でもメリットが大きいのが自炊です。しかし、忙しい毎日が続くと、自炊をがんばるのは難しいもの。そこで、自炊に役立つ食材や調理器具をご紹介します。
あると便利な食材は?
カット済み野菜やレトルト食品など、手軽に食べられる食品は、疲れているときや忙しいときの助っ人。上手に活用し、一人暮らしの負担を軽減しましょう。
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●カット済み野菜
カット済み野菜は、洗うだけでそのまま食べたり、調理に使えたりするのが嬉しいところ。また、適量で販売されているため、余って腐らせた…なんてことも防げます。
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●冷凍食品
冷凍食品は、長く保存できるのがメリットです。ブロッコリーやほうれん草などの野菜や出来合いのものまであるので、日々の食事やお弁当作りにも役立ちます。
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●レトルト食品
レトルト食品は、温めるだけでおいしい料理が食べられるので便利です。種類も豊富で、一人で料理を作ると同じメニューになりがちなときにも重宝します。
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●缶詰
缶詰は、長期間保存ができるため、震災用の備蓄にも役立ちます。サバ缶やいわし缶など、常備しておきましょう。
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●チューブ型の調味料
料理の下味や、薬味に役立つしょうがやわさびは、“チューブ型”ならすぐにいたむことなく、いざ使いたいときに便利です。にんにくや大根おろしなども販売されています。
定番!そろえておくとよい調理器具は?
調理器具は、以下の9点をそろえてみましょう。一人暮らしのキッチンスペースは限られているため、はじめは最小限に調理器具をそろえて、あとから必要に応じて追加していくのがおすすめです。
<そろえておくと便利な9つの調理器具>
包丁、まな板、ボウル、お玉、フライ返し、フライパン、鍋、炊飯器、電子レンジなど
一人暮らしの賢い買い物術
食材を無駄にしないために計画的に買い物をすることも大切です。買いすぎを防ぐためにも、以下を参考にしてみてください。
① 献立を決めておく
あらかじめ献立を考えておくことで、必要な食材がわかりやすくなり、無駄な買い物を減らせます。可能であれば3日から1週間分の献立を作成しておきましょう。買い物の頻度を減らすことで、忙しいときの負担軽減にもつながります。
② 購入リストを作っておく
次にストックしている食材を確認しながら、献立に必要な食材の「購入リスト」を作ります。時間がない場合は、冷蔵庫の中身の写真を撮っておくだけでもOK。買い物時に必要なものと不要なものがわかり、無駄な買い物を防げます。店内にいる時間の短縮にもつながります。
③ 買う前に期限を確認する
買う前に食材の消費期限を確認してから購入しましょう。すぐに調理する予定であれば、「食品ロス」を防ぐために期限が近いものを選ぶのもよいですね。
料理初心者でも簡単&栄養が摂れるおすすめメニュー
最後に、料理初心者でも手軽においしく、栄養が摂れるメニューをご紹介します。
●包丁いらずでパパッと!キャベツとミニトマトの具沢山豚汁
包丁を使うのが苦手な方は、葉物野菜を味方につけると便利です。キャベツ、レタスなどの葉物野菜なら、手でちぎれるので、包丁いらず。
肌や骨の健康に役立つビタミンCやカルシウムのほか、塩分(ナトリウム)の排出をサポートするカリウム、抗酸化作用があるリコピンが摂れる1杯です。また、豚肉も入れることで筋肉に必要なたんぱく源の補給にも!(注4,6)。
【作り方】
- ①キャベツは手でちぎり、ミニトマトはヘタをとる。豚こま切れ肉はバラバラにほぐしておく。
- ②鍋にだし汁を入れ、沸騰したら弱火にして①を入れる。あくをすくい取ったら具材に火が通るまで煮込む。
- ③最後に味噌を溶かし入れ、お椀に盛り付ける。
●野菜もしっかり!市販ルウで簡単ドライカレー
市販のルウを使うことで、味付けが決まりやすく、料理初心者でも野菜を数種類摂取できるドライカレーができます。少し多めに作って、冷凍しておくのもよいでしょう。その際は、3週間ほどを目安に食べ切ってください。
エネルギー代謝に必要なビタミンB群や肌、腸の健康を助けるビタミンA(β-カロテン)、ビタミンC、食物繊維など、さまざまな栄養素が摂れます(注4,6)。また、タンパク源であるひき肉が入っているのでごはんもプラスすれば、炭水化物、野菜、タンパク質と、1品で体に必要な栄養素が摂れます。
【作り方】
- ①玉ねぎ、にんじん、ピーマンはみじん切り、カレーのルウは粗みじん切りにする。
- ②フライパンにオリーブオイルを熱し、ひき肉、①の野菜、塩、チューブ型の調味料にんにく・しょうがを加えて弱火で炒める。
- ③ひき肉の色が変わってきたら、水を加えて沸騰させ、いったん火を止める。ルウを加えて、再度火にかけ水分がなくなるまで煮る。
- ④お皿にごはんを盛り付け、ドライカレーをかける。
いかがでしたか?自炊を習慣化するために、手軽な食材やメニューを活用しながらがんばりすぎないようにしましょう。ぜひ、健康的で無理のない自炊計画を立て、一人暮らしを楽しんでください。