ビニールハウスでの栽培や品種改良などが進み、最近では12月後半から店頭にも並び始める“いちご”ですが、本来“いちご”の旬は3〜4月の春。価格も露地物が出回るこの時期に下がる傾向があります。
“いちご”は世界各国で食べられていますが、生でそのまま食べる量は日本が世界一多いといわれています。(注1)また、日本産の“いちご”は海外でも人気が高く、輸出量も増加傾向にあるのをご存知でしょうか。
そんな“いちご”がおいしい季節をもっと楽しめる、品種による特徴や甘くておいしい“いちご”の選び方、“いちご”に含まれる栄養素、そしておいしい食べ方などをご紹介します。
人気の“いちご”の品種には、どのようなものがあるの?
日本産の“いちご”の品種は約300種と大変多く、世界全体の品種の半分以上が日本産のものといわれるほど。そのなかでも店頭で見かけることが多い人気の品種の味や粒の大きさなどの特徴をみていきましょう。
●とちおとめ
栃木県生まれの“いちご”で、現在、東日本のシェアNo.1の品種です。1996年に誕生したとちおとめの人気は高く、さまざまな品種が出てきても長年にわたって親しまれています。一粒が平均15g前後の中粒で日持ちがよく、酸味が少なくて甘味が強いのが特徴です。
●あまおう
福岡県生まれの“いちご”で、正式な品種名は「福岡S6号」。あまおうの名前は、「あか(赤)い、まる(丸)い、おお(大)きい、うまい」の頭文字から名付けられました。一粒が20gを超える中〜大粒のものが多い特徴があり、見た目も丸みがあってかわいらしい形をしています。果肉はかためで果汁が多く、甘味と酸味が調和して風味のよい味わいです。
●ひのしずく
熊本県生まれの“いちご”で、正式な品種名は「熊研い548」といいます。一粒が平均18g前後の中粒で、紅色の果皮はツヤがあり美しい見た目をしています。果皮は少しやわらかめでみずみずしく、甘味が強く酸味がやや少ない特徴があり、味と香りに優れています。
●紅ほっぺ
静岡県生まれの“いちご”で、紅ほっぺという名前は、果皮が美しい紅色で果肉も中心まで赤くなること、そしてほっぺが落ちるほどのコクがある味のよさを表現しているそうです。
見た目は、やや縦長の円錐形をしていて、果肉はややかため、甘味が強いだけでなく適度な酸味があり、調和がとれた味わい。一粒のサイズにばらつきが出やすく、春の観光シーズンに多く収穫できるため、“いちご”狩り用に使われています。
これらの人気品種のほかに、個性的な新品種も続々と誕生し注目を集めています。粒の色や形、大きさが特徴的な品種には、ピンク色の「初恋の香り(山梨県・福島県生まれ)」、桃のような香りがあるのが特徴で芳醇な香りが名前の由来にもなっている「桃薫(とうくん)(三重県生まれ)」、粒が白く一粒の重さが平均60gと大玉の「天使の実(佐賀県生まれ)」、一粒100gを超えることもある超特大サイズの「美人姫(岐阜県生まれ)」といったものがあります。どれもかわいらしい素敵なネーミングですよね。見つけたときには、ぜひ手にとってみてはいかがでしょう。
甘くておいしい、“いちご”の選び方&食べ方
“いちご”は収穫後に熟す(時間をおいておいしくなる)ことはないため、収穫したばかりの新鮮なものが一番おいしいといわれています。そこで、より新鮮で熟しているものを選ぶために、下記のチェックポイントを確認してみましょう。
<“いちご”を選ぶときのチェックポイント>
色 |
果実全体が赤く染まって熟しているか。
※品種によっては色が薄めでも完熟状態のものもあります。
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果皮 |
ハリ・ツヤがあるか。傷がないか。
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ヘタ |
緑色が鮮やかで、しなびておらず、ピンとしているか。
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また、よりおいしく食べるコツを2つご紹介します。
<“いちご”をおいしく食べるコツ>
●カットする際には縦に切る
“いちご”は先端から熟していくため、ヘタの部分よりも先端のほうが甘くなっていきます。甘い部分を均一に分けるには、ヘタをとった後に縦に切るとよいでしょう。
●少し常温においてから食べる
人の味覚は温度によって感じ方が変わり、冷たいと甘味を感じにくい特徴があります。そのため、食べる少し前に常温においたほうが甘さを感じやすくなります。
“いちご”に含まれる栄養素とは?
“いちご”には、ビタミンCが豊富に含まれています。みかんやグレープフルーツの約2倍でフルーツのなかでも特に多い特徴があります。ビタミンCは、皮膚や細胞のコラーゲンの合成に必須な栄養素であり、活性酸素を消去して細胞を保護する抗酸化作用も持っています。
100g(小粒10個前後・中粒6個前後・大粒2個前後)当たりに含まれるビタミンCは62mgで、成人男女が一日にとりたい推奨量は100mgなので、大粒の“いちご”なら3〜4個で1日分をクリアできる計算になります。(注2・3)
また、ビタミンB群の一種である葉酸も豊富で、100g当たり90μg含まれています。葉酸は細胞増殖と深い関わりがあり、不足すると巨赤芽球性貧血になってしまう恐れがあります。妊娠を望んでいる方や妊娠初期の方は、胎児の神経管閉鎖障害の発症予防のために、特に不足に気をつけたい栄養素のひとつです。
成人男女が一日に摂りたい推奨量は240μg(※)なので、大粒の“いちご”なら2個前後で約1/3日分を摂れることになります。(注2・3)
※成人女性でも妊娠中の方は480μgと異なります。
※μg=1mgの1000分の1
そのほかにも、“いちご”の赤い色素成分であるポリフェノールの一種で抗酸化作用をもつアントシアニンや、食物繊維、カリウムも多く含んでいます。
<効率よく栄養を摂るコツは?>
“いちご”に含まれる栄養素のなかで特に多いビタミンCを効率よく摂るには、その特徴を生かして食べるとよいでしょう。ビタミンCは水溶性ビタミンで、熱に弱く壊れやすい特徴があります。効率よく摂るためには、生のまま食べるほか、調理をする場合は、スムージーやシャーベットなど、加熱をせずに食べるのがおすすめです。
少しでも長持ちさせる保存方法のポイント
最後に、食べきれなかったときの保存方法をご紹介します。
●生で食べるとき
パックから出し、重ならないようにポリエチレン袋などに入れて、冷蔵庫で保存しましょう。水洗いをすると、カビが生える可能性があるので食べる直前に洗うのがおすすめです。先に洗う必要がある場合は、水分をよくとってから保存しましょう。
●量が多くて食べきれないとき、ジャムやスムージーにするとき
一度冷凍保存をするのがおすすめです。冷凍するときは、“いちご”を水洗いしてヘタをとり、水分も取り除いてフリーザーバッグに入れて保存します。冷凍“いちご”でジャムやスムージーを作ると、生の“いちご”を使用するよりも、なめらかな食感に仕上がります。
旬の季節は“いちご”を思いっきり楽しみましょう!
“いちご”には特徴が異なるさまざまな品種があるため、食べ比べてみるとより一層楽しめます。おいしいだけでなく、ビタミンCなど私たちが不足しがちな栄養素を含むため、手軽に入手できる時期はより健康的な間食として、甘いお菓子やスナック菓子の代わりに“いちご”を食べるなど、日々の食習慣のなかに上手に活用できると良いですね。
ただし、どんなに体に良い栄養素が含まれているからといっても、毎日たくさんの量を食べ過ぎてしまうと、糖質の摂り過ぎから肥満の原因になってしまうなど、健康に悪影響を与えてしまう恐れもありますので、適量を楽しむように気をつけましょう。