前回は「夏でも注意したい、専門家に聞いた「冷え症」を改善する知恵と食生活」として冷え症についての基本的なメカニズムなどをご紹介いたしました。今回は、「夏の冷え症」に絞って、今日からお役立ちいただける夏の冷え対策についてご案内いたします。
「冷え症」といえば、寒い冬の季節になるものだと思われるかもしれませんが、実は暑い夏の季節に冷えの症状に悩む人も意外と多いのです。手足や身体が冷えるといった自覚症状があるものから、「それも冷え症のせい?」と意外に思われる不調までさまざま。夏に冷え症が起きるメカニズムや、自分でできる対処方法、食習慣のポイントについてご紹介します。
夏なのになぜ冷える? 冷え症のメカニズム
冷え症というと、身体が冷えて手足が冷たくなるという状態だと思われるかもしれません。しかし、冷え症による不調はさまざまです。以下のようなトラブルに悩んでいる人は、いませんか?
- ・慢性的に疲れやすく、やる気がでない
- ・肩こりや腰痛がある
- ・頭痛や生理痛がある
- ・シミや吹き出物ができやすい
- ・手足は冷たいのに顔が熱くなる
- ・足がむくむ
- ・体重が増えた
- ・理由もなくイライラすることがある
- ・トイレに行く回数が増えた
一見、冷えとは関係なさそうな不調も、身体が冷えているから起きている可能性があります。それにしても暑い季節にどうして身体が冷えるのでしょうか? まずは、夏に身体が冷えるメカニズムを説明します。
暑さが厳しい屋外から、エアコンが良く効いた室内に入ると、涼しさを感じ、汗がひきます。しかし、この急激に変化する温度差が要注意。身体に負担をかけているのです。身体が対応できる温度差は「7℃ぐらいまで」といわれています。それ以上の気温差がある場所を頻繁に出入りすると、体温を調節する自律神経がうまく働かなくなります。俗に「冷房病」といわれており、自律神経が乱れ、身体的には手足の冷えはもちろん、頭痛や生理痛、むくみや不眠などの症状につながります。さらに、手足は冷たいのに顔や頭が熱くなる「冷えのぼせ」や、やる気がでない、イライラするなどさまざまな不調が起きるのです。
また、暑い季節にノースリーブやスカートなど薄手の服装やサンダルなどで肌の露出が増えるのも冷える要因の一つ。首や足首の皮膚のすぐ下には太い血管が通っており、これらの部位に直接冷房の風が当たると、すぐに身体全体が冷えてしまいます。冷えると血管が収縮し、循環が滞るため肩こりや腰痛が起きやすくなります。血の巡りが悪いと酸化物質や疲労物質などの老廃物が残り、疲れがとれなくなる原因ともなるのです。
アイスで内臓温度が4℃近くも下がる!? 病気のリスクも。
夏は、キンキンに冷えたアイスやビールなどが美味しく感じられる季節ですが、これらも身体を冷やします。特に注意したいのが内臓の冷え。冷たいアイスを食べると内臓温度は4℃近く下がるといわれています。内臓温度が下がると、臓器の機能が低下するとともに基礎代謝や免疫力も落ちます。基礎代謝とは、呼吸や心臓など生命を維持するためのエネルギーのこと。内臓温度が1℃下がると基礎代謝が11~12%落ちてしまい、摂取した栄養をうまくエネルギーに変えられず、脂肪となってしまいます。さらに、老廃物が排出されず、色素が沈着しやすくなり、シミや吹き出ものなどの肌トラブルが増える原因にも。また免疫を司る白血球の働きは、内臓温度が1℃下がると30%以上低下し、病気やさまざまな不調を引き起こします。あまり意識されませんが、内臓の冷えは身体表面の冷えより深刻なのです。
オフィスや自宅でできる夏の冷え対策
オフィスなど空調の効いた部屋では、「寒いな」と感じる前にカーディガンなどを一枚羽織る、スカーフやストールを巻くなどして首に直接冷風があたらないようにする工夫が効果的です。薄手の腹巻きをするのもいいでしょう。素材は天然素材のシルク100%がおすすめです。シルクは吸湿性・保温性にすぐれ、湿気を吐き出す力もあるので、汗で蒸れることもありません。
夜はゆっくりぬるめのお風呂に浸かり、足首を冷やさないように5本指ソックスなどで温めましょう。冷えた身体はその日のうちに温めるのが大切です。冷えを蓄積させずに、その日の冷えはその日に解消することを心がけましょう。
今日から始められる、冷えないための食習慣
食事のポイントとしても、やはり身体を冷やす食材を避けるのが大切です。トマトやナスなど夏が旬の野菜や、バナナやマンゴーなど南国で育った果物は身体を冷やす性質があります。また飲み物では、コーヒーや緑茶はホットで飲んだとしても利尿作用があり身体を冷やします。とはいえ、暑い季節には身体を冷やすとわかってはいても、これらの食べものも楽しみたいもの。そんな時にちょっとしたポイントがあります。
今日からできる「身体を冷やさないための4つのポイント」をご紹介します。
- 1.コーヒーや緑茶を飲みたい時は、ほうじ茶や紅茶などの発酵茶、ウーロン茶などの半発酵茶や、お腹を温める黒豆茶などに代えてみてはいかがでしょう。紅茶はジンジャーティーにすると効果が高まります。
- 2.トマトやナス、キュウリなどの夏野菜は生野菜で食べ過ぎないようにするといいでしょう。サラダで食べる時はショウガのすりおろしや味噌などの発酵食品と合わせて食べるなどの工夫をしましょう。温野菜やラタトゥイユなどの煮込み料理にするのもおすすめです。
- 3.冷たいビールも飲みたいところですが、お酒なら赤ワインや日本酒など常温で飲むと冷えを防ぐことができます。または、冷たいビールを飲みたい場合は、空腹のまま「とりあえずビール!」ではなく、先に身体を冷やさないおつまみなどを食べてお腹を温めてからにしましょう。
- 4.冷奴や素麺、冷やしうどんも身体を冷やします。豆腐を食べる時は冷奴ではなく湯豆腐にしたり、素麺は煮麺にしたりとできるだけ温めて食べることを心がけましょう。冷やして食べたい時は、身体を温める作用のあるネギやシソ、唐辛子の薬味をかけましょう。
夏の冷え症はなかなか自覚できず、冷えの症状が進行してしまうことがあります。冷房の設定温度や食事のちょっとしたポイントを生活に取り入れて、冷えを改善しましょう。
- 【主要参考文献】
- 『家庭でできる漢方 冷え症』(仙頭正四郎、土方康世著 農山漁村文化協会)
- 『冷え症を治してキレイにやせる』(全国冷え症研究所所長 山口勝利)
- 『タイプ別 冷え症改善ブック』(南雲久美子 社団法人家の光協会)
- 『冷えた女は、ブスになる。』(全国冷え症研究所所長 山口勝利)
- 『その手があったか! 冷え症を治す64のワザ+α』(渡邉賀子 保健同人社)
- 『死ぬまで元気でいたければとにかく内臓を温めなさい』(全国冷え症研究所所長 山口勝利)