「新しい生活様式」が定着し、在宅時間が長くなる中で、「家飲み」を楽しむ人が増えています。外出がままならない昨今のアルコールの楽しみ方ですが、酒量が増えて体調を崩したり、ひいてはアルコール依存症につながったりする心配もあります。今回は、上手なアルコールとの付き合い方を見ていきましょう。
新しい生活様式の中で増える「家飲み」
総務省「家計調査2020年度」によると、2020年3月頃から、二人以上世帯の外食の「飲酒代」つまり外で飲む費用は前年よりも減少する一方で、主に「家飲み」用途と見られる「酒類」の支出額は、前年より増加傾向が見られました(Go Toキャンペーンなどの影響で多少の変動あり)。自宅で過ごす時間が長くなる「新しい生活様式」の中で、リフレッシュに「家飲み」を楽しむ人が増えていることがわかります。
「家飲み」は、家でのんびり寛いでアルコールを楽しめ、終電時間を気にする心配もありません。だからこそ、たがが外れて緊張感がなくなり、ついつい飲みすぎてしまいがちです。朝になると二日酔いという経験はないでしょうか。また在宅時間が増加したことによるストレスもあり、ついつい深酒が習慣化してしまうという心配もあります。
アルコールを摂りすぎるとどうなるの?
飲酒をすれば「酔った」状態になります。どれくらいの量で酔うかは個人差が大変大きいものです。適度な量の摂取なら気分も良くなったり、会話が弾んだりする良い面もありますが、大量に飲むことでアルコールの血中濃度が高まると小脳の機能が低下し、運動や呼吸機能が低下するなどの危険もあります。
一般的に「ほろ酔い」は血中アルコール濃度が0.02%から0.1%程度で、気分が大きくなりリラックスした状態です。0.3%を超えると歩行や会話が難しくなり息も荒くなり朦朧とした「泥酔期」、0.4%を超えると呼吸停止することもある「昏睡期」、泥酔以上になると、嘔吐・血圧低下・呼吸数の低下、意識朦朧など、生命にも関わってくる可能性があります。
低年齢や高齢者、女性、飲酒により顔が赤くなる人は、アルコールの分解能力が低いため、飲酒による不快な症状や体調不良のリスクが高くなります。またアルコールの飲みすぎと、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病、消化器系疾患などとの関連性も指摘されています。
二日酔いになるのはなぜ?
酒類は主に糖質を分解し、発酵によりアルコールを産生しますから、体内にアルコールが入っても消化の必要がありません。すぐに胃・小腸で吸収され、肝臓へと運ばれます。そこで酵素によってアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸に分解され、その後は筋肉や心臓、その他の臓器に移動してエネルギーを産出(1gあたり7kcal)し、最終的には炭酸ガスと水になり、尿や汗、呼気として体外に排出されます。
二日酔いの原因は、飲みすぎることですが、今の科学でもまだまだ明らかとなっておらず、体調や睡眠不足、胃腸障害、脱水、低血糖などさまざまな要因が絡んで起こると見られています。
また、遺伝的にアセトアルデヒドを分解する酵素の少ない人もいます。このような人は酒類を飲むとすぐに顔が赤くなるタイプで、頭痛や吐き気などの二日酔いを引き起こしやすいと見られています。
飲みすぎるとビタミンB1不足になる
アルコールを肝臓でアセトアルデヒドに、さらに酢酸に代謝する際には酵素が働きますが、その力だけでは足りずビタミンB1が必要となります。また酢酸から炭酸ガスと水に変わる際にエネルギーを産生するためにもビタミンB1が必要です。
さらに、アルコールを摂取するとさまざまな栄養素の吸収を低下させるということも指摘されています。深酒はビタミンB1が不足しやすい状況になってしまいます。
深酒した翌日ビタミンB1不足の状態では、たとえ朝食に菓子パンなどを口にしても、糖質をエネルギーに変えることができず、疲労感を引きずったまま1日が始まることになります。
ビタミンB1は、豚肉、魚類、大豆、アーモンドやくるみ、ごまなどのナッツ・シード類、玄米や小麦胚芽などの穀類に多く含まれています。
さまざまな栄養素もバランスよく摂ろう
酒類とうまく付き合う上で必要な栄養素は、ビタミンB1だけではありません。例えば、たんぱく質やミネラルもアルコール分解には必要で、特に亜鉛はたくさん消費します。またビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEは、二日酔いの原因となるアセトアルデヒドの分解を促します。
このように、栄養素はお互いに助け合って働きますから、さまざまな栄養素を摂取しておくことが大切です。
うま味や脂肪の多い肉や魚介類などは、良質なたんぱく源で酒類とのペアリングでおいしく食が進みますが、肥満を招いたり、脂肪の摂りすぎは肝臓に負担をかけたりします。家飲みの機会が多い人は、脂肪が多い部位を避け、低カロリーな植物性の枝豆や豆腐などの大豆製品を摂ることをおすすめします。
野菜や海藻、果物には、ビタミン、ミネラル、食物繊維を含むものが多いので、こうした食品をしっかり食べるように心がけましょう。
「家飲み」を健康的に楽しむために
・空腹で飲まずに、食べながらゆっくりペースで
空腹時に飲酒をすると、胃を通過して小腸に届き、アルコールを素早く吸収して血中濃度が一気に高まります。肝臓の処理能力にも負担がかかります。個人差はありますが、ビール中瓶1本(日本酒なら1合、ワインならグラス2杯)のアルコールを分解するのに、2〜5時間かかるといわれています。
食事やつまみを食べながら、ゆっくり飲酒するように心がけると、アルコールが胃に留まるため吸収が遅くなります。チェイサー(水)も添えて、ペースをコントロールするのもよいでしょう。また意外かもしれませんが酒類は液体とはいえ、ビールなど利尿作用のあるものが多く排出してしまうため、知らずに水分不足になることもあります。そういう意味でも、飲みながらチェイサーで水分補給することは大切です。
・飲む量をコントロール
「家飲み」すると、帰る必要がないのでついつい飲みすぎてしまいがち。深酒が習慣化しないように、飲む量、終了時間などを自分で決めて、コントロールできるようにしましょう。
酒類を買いだめしていると、ついつい誘惑に負けて、もう一本あけてしまいがちです。飲む量をその日に買うとか、キリよく飲み終えるように、小さめサイズを選ぶなど、工夫してみましょう。
・肝臓を休ませてあげましょう
当たり前ですが、飲む機会が増えれば肝臓を休ませてあげましょう。「週に1度は休肝日」を実践されている方もいらっしゃると思いますが、できれば週に2日が推奨されています。
執筆者プロフィール
南 恵子(みなみ けいこ)
All About「食と健康」ガイド。NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター、エコ・クッキングナビゲーター、日本茶インストラクターなどの資格取得。現在、食と健康アドバイザーとして、健康と社会に配慮した食生活の提案、レシピ提供、執筆、講演等を中心に活動。毎日の健康管理に欠かせない食に関する豊富な情報を発信しています。
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