超高齢社会においては健康寿命を延ばすことが、個人にとっても社会にとっても重要です。健康長寿社会の実現に向けて、ぜひ知っておきたいキーワードが「フレイル」。そもそもフレイルとは何?対策や予防法は?今回は、そんなフレイルについて見ていきましょう。
「虚弱」が語源、そもそも「フレイル」とは
「フレイル」とは日本老年医学会が提唱した概念で、虚弱を意味する英語の「Frailty」からを語源とする言葉です。加齢により心身が老い衰えた状態を意味し、厚生労働省の報告書では「加齢とともに、心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱化が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」と定義されています。
高齢者は、健康と要介護の間の状態であるフレイルを経て要介護状態へ進むと見られます。フレイルについての統一された基準はありませんが、一般的には以下の項目のうち3つ以上に当てはまると「フレイル」、1~2つ当てはまる場合は「プレフレイル」とされます。
- 1.体重減少 6か月で、2kg以上の(意図しない)体重減少
- 2.筋力低下 握力:男性<28kg、女性<18kg
- 3.疲労感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
- 4.歩行速度 通常歩行速度:<1.0m/秒
- 5.身体活動 ①軽い運動・体操をしていますか?
- ②定期的な運動・スポーツをしていますか?
- 上記の2つのいずれも「週1回もしていない」と回答
※国立長寿医療研究センター 日本版フレイル基準(J-CHS基準)より
また、フレイルは身体的な衰えだけでなく、歯や口の衰え(オーラルフレイル)、「何かをするのがおっくうになる」といった精神面の変化や認知の衰え、「人付き合いの減少」「閉じこもりがち」のような社会性の衰えなど、多面的な問題も含んでいます。
フレイルは徐々に進行し、さまざまな衰えが表れますが、その兆候に早く気づき、適切に対処して、維持・改善へつなげることが重要です。
「フレイル」が進行するとどうなる?
フレイル状態になると、感染症にかかりやすくなったり、転倒しやすく骨折したり、感情がコントロールしにくくなったりしてしまいます。
フレイルが進行すると、単に身体活動量が減るというだけでなく、文字通りの虚弱から風邪が肺炎に、気力停滞から鬱や認知症に、怪我から寝たきりになるなど病気も悪化しやすくなり、生命活動自体に影響していきます。
一方、注目すべきは、65歳でフレイル状態になっている人もいれば、80~90歳になってもフレイルになっていない人がいること。早くフレイルになってしまう人は、高血圧や糖尿病などの持病を抱えて、しかも重症化しているなどが原因と考えられます。持病の管理と、筋力の低下を予防して足腰を丈夫にしておくことが大切です。
「サルコペニア」と「フレイルサイクル」
「サルコペニア」とは、加齢や病気による筋肉量の減少、筋力の低下、身体能力の低下した状態を指す言葉で、フレイルの要因のひとつとなります。
たとえば加齢や病気で筋肉量が低下しサルコペニアを起こすと、歩行速度が落ちたり、疲れやすくなったりと身体の機能が低下し、それに伴い活動量も減少します。そうなるとエネルギー消費量が減り、必要になるエネルギー量も少なくなることから食欲も低下、栄養不足の状態になります。これが慢性的になるとサルコペニアがさらに進行する……この悪循環を「フレイルサイクル」と呼び、健康長寿のためには、フレイルにならない、加速させないための予防で、この循環を断ち切ることも必要です。
フレイルの予防と回復に、栄養と運動と人との触れ合いを
フレイルを予防するには栄養・運動・社会参加を継続することが重要とされています。
・栄養バランスの良い食事
たんぱく質を中心に、さまざまな栄養素をバランス良く摂り、筋肉を減らさないように心がけましょう。あわせて歯科口腔の定期的な管理も忘れずに。
・適度な運動
特別な運動ではなく、屋外のウォーキングからでも十分。運動により骨を強化し、筋力をつけることで、転倒を防ぐことにもつながります。かかとの上げ下げ、椅子スクワットなど筋力の維持に役立つ運動を、体調にあわせて無理のない範囲で行うのも良いでしょう。
・社会参加
社会的なつながりを失うことがフレイルの入り口と言われるほど。友人や家族とコミュニケーションをとったり、ご近所付き合い、地域活動などで人との交流を積極的に。行動範囲を狭めないことも大切です。コミュニケーションをとり、笑顔になることはストレスの軽減にもつながります。
フレイルは、早めに気づき対処すれば健康な状態に回復する可能性もあります。これからの高齢化社会では、周囲の人々がフレイルに気付き、予防や治療へ介入することも重要といえるでしょう。
※文中リンゴキッドの吹き出しは、編集部追記
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出典
(株)オールアバウト
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オールアバウト
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