季節に関わらず体が冷える、手足が冷たい……。健やかに日々をすごすためにも、改善したいところです。日々の生活の中でも体を温める方法はいろいろありますが、食事についても諸説言われています。例えば、ビタミンEが多い食材は体を温める、カプサイシンは体を温めるなどですが、その理由は意外と知らないもの。体を温める理由を知って、ポカポカを目指しましょう!
体を温める食材の考え方は、東洋と西洋で違う!
体を温めることを期待される食材については、さまざまなことが言われており、東洋医学的な観点と西洋医学的な観点で異なります。例えば東洋医学的な薬膳や漢方では、体を冷やす「陰の食材」と、体を温める「陽の食材」、また「中庸の食材」に分かれていると考えられています。
冬に旬を迎える食材、寒い地域で獲れる食材、土のなかで育つ野菜、色の濃い食材などが体を温めるとよく耳にしますが、これは陽の食材の見分け方。東洋医学と西洋医学は、同じ山を違うアプローチで登るようなもので、どちらが正しいというわけではありませんが、今回は、西洋医学的な栄養学の観点から、体を温める作用についてみていきたいと思います。
栄養学の観点からいうと、体を温める食材は基本的には即効性に期待するよりも、継続的に食べ続けることがポイントとなります。継続的に食べ続けることで基礎代謝を上げたり、血流を良くしたりすることで、内側から体の環境を整えられる栄養素を摂るように心がけましょう。
冷えにくい体を作るために必要な食材と栄養素は
では、具体的にどんな食材や栄養素が体を温める作用をもつのでしょうか? さっそく見ていきましょう。
たんぱく質
体の組織を作るために不可欠で、血の成分にもなる栄養素。エネルギーを消費する際に熱を生み出して、体を温めていますが、この熱を作り出すのが筋肉です。私たちは、何もしていない時でも生命活動を維持するためにエネルギーを消費(消費される最低限のエネルギーが基礎代謝)していますが、筋量がつくと基礎代謝が上がり熱生産される量が増えます。 トレーニングも必要ですが、筋力がつくことで基礎代謝が上がれば、冷えにくい体になっていきます。逆に筋肉が衰えてしまうと、基礎代謝が下がり、血液の循環も悪くなり体が冷えやすくなってしまうのです。
また必須アミノ酸と呼ばれる体温調節に欠かせない9種類のたんぱく質は、体内で作ることができないため、食事で補うのが望ましいです。適量をしっかり摂るようにしましょう。
【たんぱく質を多く含む食材とは】
肉類(赤身肉など脂質の少ないものを推奨)、魚類(するめ、いわし、まぐろ赤身、さば、たらなど)、豆類(豆腐、大豆、納豆、きな粉)、乳製品、卵類
たんぱく質についての詳細はこちらの記事もご参照ください。
ビタミンE
ビタミンEは末梢の血管を拡張させて血流を整えてくれます。また抗酸化作用が高く、血液のドロドロ化を防いでくれると言われています。 体の中で作られた熱エネルギーは血液によって全身に運ばれていきますので、血流と体温も密接につながっています。 例えば、気温が0℃の冬でも体温が変わらないのは、脳が命令を出して血管を収縮させ、熱が奪われないようにしているためです。
【ビタミンEを多く含む食材とは】
ナッツ類(アーモンド、落花生)、魚類(うなぎ、たらこ、ぶりなど)、野菜(ほうれん草、ブロッコリー、かぼちゃ、モロヘイヤ、赤ピーマンなど)
ビタミンC
ビタミンCは補助的なお助け栄養素として最適です。血液を作る元となる鉄分の吸収を助けてくれます。またビタミンEは体内に入ると自らが酸化し効力を失ってしまいがちですが、ビタミンCとあわせて摂ると、それを防いでくれると言われています。
【ビタミンCを多く含む食材とは】
野菜類(ブロッコリー、キャベツ、パセリ、カリフラワー、れんこんなど)、かんきつ類(レモン、オレンジ、アセロラなど)
ビタミンB群
たんぱく質、糖質、脂質からなる三大栄養素をエネルギーに変えるために必要です。代謝アップ効果が期待できるので、体を温めることに繋がります。
【ビタミンB群を多く含む食材とは】
肉類(豚肉、豚レバー、鶏ささみなど)、野菜類(モロヘイヤ、ほうれん草)、ナッツ類(ピーナッツなど)、魚類(うなぎ、まぐろ赤身、かつおなど)
カプサイシン
聞き慣れた方もいるかもしれませんが、唐辛子に含まれている辛味成分です。辛くて刺激的な唐辛子ですが、このカプサイシンを摂ることで、脳や脊髄などの神経が刺激され、一時的に血管が拡張・発汗作用が生じます。そのため体温は上がりますが、これは一時的な話。発汗をすると体温は下がりますし、摂りすぎると胃腸が荒れてしまいます。たしかにポカポカ食材ですが、自分の目的に応じて取り入れましょう。
効果的に体を温めたい! 食べ方のコツ
普段から料理に取り入れたい、体を温める食材。さらにポイントを押さえればさらにポカポカ度はアップ!以下のことを意識して、毎日の食事で冷えにくい体を目指しましょう。
基本は、温かい料理で食べること
いくら体を温める食材とはいえ、冷やして食べたり冷たい料理にしたりすると、当然体は冷えてしまいます。 鍋料理をイメージすると分かるように、体を温めたい時は温かい料理にするのが基本。鍋や煮込み料理、カレー、スープなどに入れて食べるようにしましょう。とくに水分の多い野菜類は、加熱したり、体を温める他の食材と組み合わせたりして上手に取り入れてみてください。
よく噛んで、ゆっくり食べること
食事をすると、食べ物を消化吸収するためにエネルギーを消費するため、安静にしていても代謝量が増加して体温が上がります。 これを「食事誘発性熱産生」と言いますが、よく噛んで食べると食事誘発性熱産生はさらに高まり、体が温まりやすくなると言われています。温め効果を効率よくアップさせるためにも、体を温める食材をよく噛んで食べるように心掛けましょう。
温かい体は、元気とキレイの源! ただしカプサイシンなどの発汗作用があるもの以外は、栄養素として継続的に摂ることが重要です。食材を食べるだけで瞬時に体が温まったり、すぐに冷えが改善したりするわけではありませんが、継続は力なり。毎日の食事に取り入れることで、日常生活から冷えにくい体づくりを意識してみてはいかがでしょうか。
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執筆者プロフィール
片村 優美(かたむら ゆみ)
2つの病院で栄養指導や給食管理に従事したあと、フリーランスとして活動を始める。主にサイト監修や執筆が中心だが、食育教室や健康講座の開催など直接人と触れ合うことができる機会も大切にしている。正しいダイエット方法をわかりやすく伝えるため、指導媒体などの商品開発も模索中。
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