「食べる時は野菜から」が、もはや定番となりつつあるベジファースト。手軽で続けやすいダイエット方法として注目され続けていますが、実は正しく取り入れるためには注意するべきこともあります。今回は、そんなベジファーストについて、メリットや長続きさせるためのポイントなども合わせて改めてご紹介します。
ベジファーストとは? なぜ健康にいいの?
ベジファーストとは文字通り、野菜(ベジタブル)を最初に(ファースト)食べることで、急激な血糖値の上昇を防ぎ、生活習慣病や肥満を抑制する食事方法です。
野菜に含まれている食物繊維、特に水溶性食物繊維には粘性があり、胃腸内をゆっくりと移動するため糖の消化や吸収のスピードを遅らせ、血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります。私たちが食事をすると血糖値が上がりますが、その上がり方が急激だったり血糖値が高い状態が長く続いたりすると、血管の内壁が傷つきやすくなり、将来、糖尿病などの生活習慣病になるリスクが高くなります。
また、血糖値を下げるために膵臓から出るインスリンというホルモンは、血中の糖分を脂肪に変えて体にためる働きがあります。血糖値が急激に上昇するとインスリンが過剰に分泌されるため、体に脂肪をため込みやすくなってしまうのです。
そこで、食事の際にはまずサラダやお浸しといった野菜や汁物から食べ始め、次に肉や魚などのたんぱく質、最後にごはんや麺類など糖質の多いものを食べて血糖値の上昇を防ぐというのが、ベジファーストの考え方です。
腸内環境にもダイエットにもうれしい食物繊維。たくさんとるにはどうすればいい?
食物繊維には、血糖値の急激な上昇を防ぐ以外にも、メリットがたくさんあります。
例えば、食物繊維が多く含まれる野菜はよく噛まないと飲み込めないため、自然と噛む回数が増えます。すると、脳の満腹中枢が刺激されて食欲が抑えられ、少ない量の糖質でも満足感が得られます。つまり、健康や美容のためにごはんを減らしても、ツラくなりにくいというわけです。
また食物繊維は、大腸で腸内細菌のエサとなって腸内環境を整え、下痢や便秘といった不調を改善してくれます。さらに、腸には全身の免疫細胞の約7割があるため、腸内環境を整えることにより、免疫力アップも期待できるといわれています。
食物繊維は毎日摂取することが重要ですが、近年その摂取量は年々減少していて、厚生労働省の「平成30年国民健康・栄養調査」によれば、男女問わず全ての年代で目標摂取量を下回っているという結果が出ています。
野菜はサラダにするのはもちろんですが、煮たりゆでたりすればかさが減ってたくさん食べられます。白米を雑穀米や玄米、分づき米などに替えたり、全粒粉のパンやパスタを選んだりすれば、さらに食物繊維の摂取量をアップさせられます。
ちなみに、ベジファーストと似たようなものに、ミートファーストという食事方法もあります。血糖値を上げすぎないよう炭水化物(糖質)を最後に食べるという目的は同じなのですが、脂質を多く含み、味やうまみの濃い肉や魚は、どうしても食べ過ぎてしまいがちです。脂質を多くとると肥満につながってしまう上、お腹がいっぱいになって野菜を食べる量が減ってしまいかねません。
どちらが正解というわけではなく、どちらを選ぶかは人それぞれですが、食物繊維のメリットをしっかりいかしたいなら、ベジファーストのほうがおすすめといえるでしょう。
今すぐベジファーストを始めるには?
ベジファーストは食べる順番を変えるだけで、今すぐ簡単に実践できますが、いくつか注意点もあります。
野菜のなかには、芋類やかぼちゃ、トウモロコシのように比較的糖質が高いものがあります。サラダと名前がついているとはいえ、ポテトサラダやかぼちゃのサラダ、コーンサラダなどは、最初に食べても思ったほどの効果は得られないので、気をつけてください。
また、野菜ジュースも気をつけなければいけません。というのも、市販の野菜ジュースには食物繊維がほとんど入っていないからです。商品によっては、味や飲みやすさを良くするために果糖やオリゴ糖を加えたり、柑橘類など糖分の高い果物が入っていたりするものもあります。また、野菜をジュース状にすると、生のまま食べる場合と比べて野菜に含まれる糖質が吸収されやすくなります。ベジファーストとしての効果を期待するなら、小松菜など糖質の低い葉もの野菜を使って、砂糖不使用のスムージーを手作りするといいでしょう。
また、そもそもベジファーストを行うためには、献立のなかに野菜を使ったメニューがあることが前提となるのはいうまでもありません。
家で食べる時はもちろん、外食の際もできるだけ、ごはんに汁物、メインのおかず、小鉢といった定食のような献立を選ぶようにしましょう。厚生労働省では1日に必要な野菜の目標摂取量を350g以上と定めていますが、お浸しやサラダ、煮物といった小鉢に入っている野菜の量は、1つ50~70g程度なので、副菜は1食につき2つくらいあるとベストです。メインのおかずにも、肉や魚ばかりでなく、野菜炒めや鶏もも肉のトマト煮といった野菜が豊富なおかずを意識して選ぶようにするといいですね。
ちなみに、ベジファーストという名前ではあるものの、海藻やきのこ類、こんにゃくなども食物繊維が豊富なので、それらを使ったメニューも「最初に食べるもの」になります。また、お味噌汁やスープなどの汁物も同様です。納豆やお漬物などでも効果が期待できるため、ほかに食物繊維が含まれているものがなければ、最初に食べてもいいでしょう。
ベジファーストを無理なく長続きさせるポイント
最初のうちは意識づけが必要かもしれませんが、慣れてくると自然とその順番で食べることができるようになります。
やってみたけどなかなか続かない、という人は、少し柔軟に考えてみてはいかがでしょう。例えば、野菜料理を全部食べ切らないと次の料理に手をつけないと決めてしまうと、メイン料理が冷めてしまうかもしれないし、最後にごはんだけ食べるのは味気ないものです。
一皿ずつ食べ進めていくフレンチやイタリアンなどと違い、日本の食文化は「口中調味」といって、白いごはんを口のなかで咀しゃくしながら、ほかのおかずで味つけをするのが特徴。食べ始めから5~10分くらい経っていれば、糖質をとっても血糖値が急激に上昇しないことがわかっているため、まずは小鉢に手をつけたら、メインの料理を食べ、もう一度小鉢に戻る。そうやっておかずをゆっくりとよく噛んで味わいながら3分の2くらい食べ終えたところで、ごはんを少しずつ食べる……こんなふうにすれば、ベジファーストを実践しながら食事の楽しさも味わえるでしょう。
また、定食ばかりではなく、たまにはラーメンやカレーなどの単品料理も食べたくなりますよね。そんな時は、野菜をトッピングしたり、サラダを追加したりなどすればOK。スーパーやコンビニでも、今やサラダ類や野菜系惣菜の充実ぶりは目を見張るものがあります。おにぎりやサンドイッチ、お弁当などを買う際には、そうした副菜をプラスすることを心がけましょう。
食物繊維の力を借りて、健康と美しさをめざすベジファースト。いつでもどこでも手軽にできて、ちょっとした工夫で続けやすいので、ぜひ試してみてください。
-
執筆者プロフィール
岡田 明子(おかだ あきこ)
管理栄養士。自身の13kgのダイエット成功経験と管理栄養士の経歴をいかし「食べてキレイにやせる」ダイエットメソッドを確立。飲食店などのレシピ開発やセミナー講師、執筆活動を精力的に務めるほか、延べ5000名以上の人にダイエットサポート実績があり、ダイエットに悩む人への個々の生活習慣に合わせた的確な指導に定評がある。
※本ページの記載内容は記事公開時点の情報に基づいて構成されています。