季節の変わり目になると体調を崩してしまう……そんな方も少なくないのではないでしょうか。特に日ごろからストレスの多い生活を送っていて、その傾向が顕著という声も。ただ少々不具合があっても不調の原因がわからず、何もせずに済ませている場合もあります。ではなぜ季節の変わり目は体調が悪くなりやすいのでしょうか。その原理を知れば、不調を防ぐ方法も見えてくるかもしれません。
原因はストレス? 季節の変わり目に、不調になりやすい理由!
経験としてストレスと体調に関係があることを知っている方も多いのではないでしょうか。ストレスと聞いて、思い浮かべるのは多忙な仕事、子育て、加齢、人間関係のトラブルといったもの。
実はそれ以外にも体がストレスと感じるものは数多くあります。例えば、気温や湿度。暑い日や寒い日、湿度が高い日などは体に負担がかかるのです。
また、人間はストレスを受けると、自律神経が乱れやすくなると言われています。自律神経とは、自分の意思に関係なく、私たちの体や機能をコントロールする神経のこと。
例えば、呼吸や脈拍は意識して早くしたり遅くしたりはできません。同じように、消化吸収や唾液の分泌、発汗による体温調節なども自律神経の働きによるものですが、この機能の乱れから不調を招きやすくなります。
自律神経は、大まかに2つに分けることができます。興奮している時に働く「交感神経」と、リラックスしている時に働く「副交感神経」。この2つがシーソーのようにバランスをとりながら働いているのです。
季節の変わり目など寒暖差の大きい時期などは、例えば発汗や体温調節の機会が多くなるなど、この2つのバランスが崩れやすくなります。天候が変わりやすい春先や、急に寒くなっていく秋などに不調になりやすいのは、日常のストレスに加え、気候によるストレスと、自律神経の切り替えが多くバランスを崩しやすい時期が同時に訪れることが原因 と考えられています。
自律神経を正常に保つには、交感神経と副交感神経のバランスが大切
自律神経を正常に保つためには、「交感神経」と「副交感神経」のバランスをうまく保つことが大切ですが、そもそも「交感神経」と「副交感神経」は役割が違います。
例えば、交感神経はストレスがかかると活発になります。動物は敵が見えると、自然と相手の様子を観察できるように瞳孔が開いたり、血管は収縮して血圧を上げ、筋肉へ優先的に血液を供給し、瞬時に動けるような態勢を整えたりするのと同じ原理です。
逆に安全な環境にいる時には、血圧が下がって筋肉の緊張は解かれ、胃や腸といった消化管の働きが活発になります。唾液がたくさん出て食べ物を飲み込みやすくなり、胃酸の分泌も多くなることで消化吸収がよくなり、呼吸も深くなってぐっすりと眠れるようになる。これは、副交感神経が優位な状態です。
現代社会に生きている私たちは敵に襲われることはありませんが、その代わりに生活のなかで多くのストレスを抱えています。長期間ストレスにさらされると交感神経が優位な状態が続くため、胃腸に血流がいかなくなって胃もたれや消化不良を起こしたり、副交感神経への切り替えがうまくいかなくてよく眠れず朝からすっきりしなかったりと、不調の原因につながるのです。
また、生活の中にも交感神経が優位になりやすい要因が数多くあります。人も含めた生物は、体内時計があり生活リズムを刻んでいますが、この体内時計に自律神経も影響されているのです。
朝起きて日光を浴びることで交感神経のスイッチが入り、夜になると副交感神経に切り替わるというのが人間本来のリズムですが、私たちはたいてい、日が暮れても活動をしています。街灯やコンビニの灯は夜中でも煌々と点いているし、多くの人は寝る直前までテレビやスマホを見ています。そのため、体内時計のリズムが崩れ、夜になっても副交感神経になかなか切り替わらないのです。
副交感神経を整えるには、どうすればいいの?
交感神経優位になりがちな中、副交感神経への切り替わりをスムーズにするためには、副交感神経が司る食事や睡眠を改善することが大切です。なかでも1日3回の食事をできるだけ決まった時間にとることで、規則正しい生活習慣にしやすくなります。
忙しかったりダイエットをしていたりして朝食を抜く人もいますが、朝食を食べることで腸が刺激されて体内時計が整います。さらに、寝ている時は胃の活動がゆるやかになるため、寝る直前に食事をすると、消化不良や胃もたれを起こしてしまいます。食事から寝るまでには2~3時間はあけたほうがいいでしょう。
タイミングだけでなく、食事内容も大切です。基本は、偏りなく幅広い食品から栄養をとること。主食(ご飯、パン、麺など)、主菜(肉や魚、豆腐、卵など)はもちろん、不足しがちな副菜(野菜や芋類、きのこや海藻類など)をメニューの中にバランスよくとり入れましょう。
その上で、さらに積極的にとりたいのが、現代人が不足しがちなカルシウムです。
よく「イライラするのはカルシウムが足りないから」などと言われますが、カルシウムをとったからといって直接的にイライラがおさまったり、ストレスが減ったりすることはありません。ただ、カルシウムは脳が興奮することを抑える働きがあります。血液中のカルシウムが不足すると骨や歯を溶かして使われてしまうため、不足しないように食事から補っておくのがおすすめです。
カルシウムについての詳細はこちらの記事もご参照ください。
たくさん摂ると「大きくなる」不足すると「イライラする」って本当?カルシウムの役割と摂り方
同様に、ストレスを受けると減ってしまうビタミンC、脳のエネルギー源となるブドウ糖、糖をエネルギーに変えるビタミンB群も意識してとっておきましょう。特にたんぱく質はストレスに対抗するために必要ですし、不足すると免疫力が弱まり、風邪をひきやすくなることもわかっています。ストレスに強い体をつくるためにも、意識的に食べるようにしましょう。
とはいえ、食事のタイミングや内容にあまりこだわりすぎるのも、かえってストレスになります。例えば寝坊して朝食を食べられない日があってもすぐに自律神経に影響が出るわけではないし、毎食たくさんの品数を揃えなくては病気になってしまうということでもありません。
うっかり寝坊してしまった日はカルシウムのとれる牛乳を1杯飲んで朝食代わりにするということでもいいでしょう。夕食をカレーにするなら、野菜やきのこをたくさん入れたり、ピクルスやサラダを添えたりすればビタミン類も補えます。
そうやって、なるべく1日3食をキープしながら2~3日の間でいろんな栄養をとるようにすれば、自律神経のバランスも徐々に整ってくるはずです。
私たちが生きていく上で、体や心にかかるストレスは避けては通れません。そんなストレスに24時間対応してくれている自律神経について理解を深めると、ストレスに対処する方法も見えてきます。まずは毎日の食事から見直してみませんか。
執筆者プロフィール
南 恵子(みなみ けいこ)
All About「食と健康」ガイド。NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター、エコ・クッキングナビゲーター、日本茶インストラクターなどの資格取得。現在、食と健康アドバイザーとして、健康と社会に配慮した食生活の提案、レシピ提供、執筆、講演等を中心に活動。毎日の健康管理に欠かせない食に関する豊富な情報を発信しています。
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