温室効果ガスとは、文字通り温室のような効果で地球を暖めるガスのこと。もしも温室効果ガスがなかったら、地球の表面はマイナス19度くらいに下がってしまい、今と同じように暮らせる環境ではなかったはず(※1)。しかし、増えすぎると必要以上に気温が上がり、さまざまな異常気象が起きやすくなるとも考えられています。増えすぎても減りすぎても困る、私たちの暮らしに大きく影響する温室効果ガスについて、親子で考えてみましょう。
温室効果がないと地表はマイナス19度って本当?
温室効果ガスは私たちを取り巻く空気に含まれていて、太陽の光を熱に変えて蓄える性質があります(英語では温室を意味するgreenhouseとgasを組み合わせて、greenhouse gas=GHGと呼ばれています)。
このガスがなければ、地球の表面はマイナス19℃くらいまで下がる計算になり、地球の風景も生物も今とはまったく違うものになっていたでしょう。現在の世界の平均気温がおよそ14℃になっているのは温室効果のおかげなんです(※1)。
こうした温室効果を持つガスは一種類でありません。代表的なものでは、二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素、代替フロンなどがあります。例えば1997年の地球温暖化防止京都会議(COP3)で採択された「京都議定書」では、私たちの暮らしが生み出している6種類の温室効果ガスに対して排出量の削減目標が決められました。
地球を暖めてくれる温室効果ガスが、なぜ国際的に大きな問題となり、削減目標まで決められたのでしょうか?それは温室効果ガスが増えすぎて必要以上に熱を蓄積し、地球の温暖化を進めることで、地球規模での気候変動を招いていると考えられたからです。
※1 気象庁HP「地球温暖化/温室効果とは」より
過去1400年の中で今が最も暖かい地球?もっと暑くなる可能性も!
確かに最近は「異常気象」という言葉が毎年のように聞かれ、大規模な被害をもたらす台風や大雨も続いています。それがすべて温暖化や気候変動のせいとは言いきれませんが、「これまでと、何か違う」と感じている人も多いでしょう。
気象庁HPの「地球温暖化」の解説ページでは「現在の地球は過去1400年で最も暖かくなっています」とあります。温暖化によって「地球規模で気温や海水温が上昇し氷河や氷床が縮小する現象」が起き、「平均的な気温の上昇のみならず、異常高温(熱波)や大雨・干ばつの増加などのさまざまな気候の変化をともなっています」と警鐘を鳴らしています(※2)。
また、21世紀末の日本の気候予測(環境省調べ)では、温室効果ガスの影響が高いままなら、日本の気候は以下のように変化する可能性を示しています(※3)。
- ・現状でも日本では世界より速いペースで気温が上昇。21世紀末には平均気温が3.4~5.4℃上昇する可能性も
- ・現状でも真夏日・猛暑日の日数は増加傾向。21世紀末、緯度の高い沖縄・奄美では年間で54日程度増える予測も
- ・現状でも日降水量が100mm以上の大雨の日数が増加する一方、降水日は減少傾向。21世紀末は、その傾向がさらに顕著に
人間の暮らしだけではなく、動植物の生態系も大きく変わり、親しんできた景色や憧れていた風景もなくなってしまう。そんな未来を子どもたちやその子どもたちに残さないよう、今から親子一緒に、温室効果ガスを減らすような暮らしに変えていくことが大切です。
※2 気象庁HP「地球温暖化/地球温暖化問題とは」より
※3 環境省『気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018〜日本の気候変動とその影響〜』より。気候変動の観測事実と将来予測【日本】で、現状を上回る積極的な温暖化対策をとらず(RCP8.5シナリオ)、温室効果ガスの影響が高いまま、最も気温が上昇する場合の予測
6種類の温室効果ガスのうち、優先して取り組むのはCO2の削減
「京都議定書」で削減対象とされた温室効果ガスのうち最も削減が急がれているのはCO2です。
6種類の温室効果ガスを同じ量で比較すると、CO2よりも温室効果が高いとされているものもありますが、これらの中で空気中に含まれる量はCO2が圧倒的に多く、温暖化に最も大きく影響するといわれています(※4)。
さらにCO2は、私たちが石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を使ったり、大規模な森林開発を進めたりしたため、急速に増えてきたことも問題となっています。もともとCO2は空気中に一定の濃度で存在していて、その平均濃度は過去65万年間およそ180ppmから280ppmの間で推移していました。
しかし人間の経済活動が活発になった産業革命以降、CO2の濃度は上昇し続け、現在の平均濃度はなんと2倍。400ppmを超えています(ppmは濃度の単位で1ppmは0.0001%)(※5)。
しかもCO2が増えて温暖化が進むと、海などから水が蒸発して水蒸気も増えます。水蒸気は、自然に存在する温室効果ガスの中で最も大きな温室効果を持つため、CO2が増えることでさらなる温暖化を進めてしまうのです。
※4 国立環境研究所 地球環境研究センターHP「ココが知りたい地球温暖化/温暖化の科学 Q10 二酸化炭素以外の温室効果ガス削減の効果」より
※5環境省『令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書』気候変動問題の概要と科学的知見より
【考えてみよう】(解答はページの一番下を見てね)
Q.温室効果ガスの中で削減を唱えられているCO2。家庭からはどのくらいの割合がどのようなものからでているのでしょうか?
暮らしを変えてCO2を減らす。私たちが今すぐできること
CO2が増えているのは、私たちの暮らしの変化が大きな要因。もちろん世界各国でCO2を含む温室効果ガスを減らす取り組みは続いていて、途上国を含むすべての主要排出国に温室効果ガスの削減を求める協定(パリ協定/2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み)もスタートしています。
日本はこの協定で、温室効果ガスを減らす中間目標として「2030年度までに、2013年の水準から26%削減する」と約束し、2018年度の時点で、2013年の水準から12%減少しています(※6)。これから約束の期限まで10年あるとはいえ、現状からさらに十数%減らすにはさまざまな工夫が必要です。
日本全体のCO2排出量のうち、家庭が出すCO2は2割以上もあり、私たちも温室効果ガスを減らすために重要な役割を担っていますが、約8割が企業活動からの排出となります。家庭からなるべく出さない工夫は必要ですが、商品の選び方などにも目を向けるのがよいかもしれません。
こうした環境に配慮した商品・サービスを選ぶこと、またもう一つ大切なのは「これは今本当に必要な物か?」を考えることです。この意識があれば、「買ったけど残して捨ててしまった」「あまり使わなかった」などの残念な状況も避けられるはず。もちろん家計の無駄も省けます。要らない物は買わない、使わない。そのシンプルな意識がCO2を減らす行動につながるのです。
2020年7月から実施されたレジ袋有料化も、効果はまだわかっていませんが「不要な物をもらわない(買わない)」「代わりに使える物を使う」という意識の定着に役立つはず。リサイクル・リユースとともに、自分に本当に必要かと考えた買い物をする、親子でそうした意識も育てていきましょう。
※6 環境省『2018年度(平成30年度)の温室効果ガス排出量(確報値)』より
A 【考えてみよう】
家庭からのCO2排出量を用途別に見ると、照明・家電製品30.9%、自動車25.5%、暖房15.6%、給湯13.7%など。節電を意識したり、省エネ機能を積極的に利用したりと、CO2の排出を減らす暮らしを心がけましょう(※7)。
※7 全国地球温暖化防止活動推進センターHP「家庭部門の動向と対策/家庭部門における二酸化炭素(CO2)排出の動向」より
※文中リンゴキッドの吹き出しは、編集部追記
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執筆者プロフィール
和田 由貴(わだ ゆうき)
環境省3R推進マイスター/節約アドバイザー。講演、執筆、テレビ出演等をこなす傍ら、現役の節約主婦兼2児の母として日々節約生活を実践。「節約は無理をしないで楽しく!」をモットーに、日常生活に密着したスマートで賢い節約生活を提案。環境関連の活動にも多数携わっています。
※本ページの記載内容は記事公開時点の情報に基づいて構成されています。
食品ロスを減らしたり、商品をリサイクル・リユースすることでごみを減らしたり、省エネや環境保護に役立つ商品を選んだり……。毎日の生活をみんなで少しずつ工夫していくことが、温室効果ガスを減らし、持続可能な社会をつくることにつながるんだ!