とかく気になる「ニオイ問題」。人に会う時などは人を不快にしていないか心配になるものです。
そんなニオイの中から、今回は口臭に着目。現役の歯科医師でAll About「歯の健康」ガイドの丸山和弘さんによると、食べ物や生活習慣、体調など、さまざまなことが要因になるそうです。実は歯みがきだけでは不十分な場合もあるという口臭。この正しい予防法を、早速、丸山さんに聞いてみましょう。
実は私、クサイかも……。そんな不安を解消できる口臭セルフチェック
体臭とは異なり、鼻を近づけて確認することができない自分の息。実はにおうにもかかわらず、自分では気づかないままになっているケースも、決して少なくありません。そんな口臭を自分でチェックするなら、ビニール袋に吐いた息をため、ニオイをかいでみるのもひとつの手。ここでビニール袋の代わりに歯みがき用のコップを使えば、より手軽だし、歯みがき後のチェックもできますね。
この時大切なのが、息をためてから30秒ほど経ってからかぐこと。これは、自分の吐く息には慣れてしまっているためで、時間をおき、感覚をリセットさせてから確認するといいでしょう。
食べ物や嗜好品だけじゃない! 3つの要因が引き起こす口臭
口臭は、さまざまな原因から発生するもの。口を開けなければ大丈夫と思うかもしれませんが、油断は禁物です。なぜなら、ニオイは腸で吸収されてから血液に取り込まれ、ガスとなって肺から排出されるから。口からだけニオイがするのではなく、鼻呼吸でもにおってしまうことがあるそうです。そんな口臭の原因は、口に入れるもの、お口の中の状態、健康状態と、大きく3つに分類されます。
■食べ物・嗜好品
にんにくやアルコール、コーヒーなど、ニオイの強いものを摂取すると、口臭リスクがアップ。特にコーヒーは、カフェインの刺激で口の中が乾きやすくなります。唾液が減ると口腔内の細菌が増加したり、ニオイ成分を洗い流すことができなくなったりして、一時的に口臭が強まるので注意したいですね。また、人によっては牛乳に含まれる成分、ラクトースが要因になることも。日本人の中にはラクトースを分解できない人が多く、そのまま残るとガスとなってニオイが発生してしまいます。牛乳を飲んでおなかがゆるくなる人は、分解できていないことになるので特にご注意を。
■口腔内の状態
口腔内が不衛生だと細菌が繁殖し、ニオイを発生させることになります。また、歯ぐきが炎症を起こし、出血しやすいようなら歯周病の可能性あり。この場合、歯周病菌の出す硫化水素系のガスと、タンパク質の分解によって発生するガスがニオイの要因となります。同様に、虫歯がある場合も歯の内部の歯髄や歯ぐきが炎症を起こし、ガスが発生することに。
■心身の健康状態
女性には特に多い便秘も、実は口臭の要因です。これは、便から発生したガスなどが腸で吸収され、肺からニオイとなって排出されるため。また、糖尿病の人は、アセトン臭と呼ばれる独特な甘いニオイが口臭に出ることもあります。さらに、ストレスも要因のひとつ。緊張すると口の中が乾き、ドライマウス状態となって唾液の分泌が減るため、口臭が強くなってしまいます。
正しい予防法を実践して、口臭リスクを軽減しよう!
口臭の要因がわかったら、次はその予防について考えてみましょう。口腔内の状態が要因の口臭を予防する最もよい方法は、かかりつけの歯科医院などで定期的にチェックしてもらい、虫歯や歯石などがあれば処置を受けること。口腔内が健康な状態になれば、その後は歯みがきを行うだけで気にならないレベルになるはずです。
にんにくやアルコールなどの場合は、食後、ガムなどのケア製品を活用しましょう。ニオイを消すというよりも香りをのせる形ですが、唾液の分泌が促進されることもあってオススメです。ただし、かみすぎは歯へのダメージに繋がるので、常にかみ続けるのは避けましょう。なお、飲むタイプの口臭予防剤も、手軽かつ効果的。このほか、日本茶や紅茶などに含まれるカテキンには若干ながら抗菌作用があるので、細菌の繁殖を抑制します。ニオイを洗い流す効果も期待できるので、食後に飲むのもいいですね。
もし、緊張などで口の中が乾いている時は、唾液の分泌を促す体操を。唇の裏側周辺を強く押しながら舌をグルグル回したり、下の前歯の裏を舌で押したりすると、多少なりともお口の中が潤います。ちなみに、口呼吸をすると口腔内が乾きやすくなるので、口の中が原因の口臭を防ぐ意味でも、鼻呼吸を心がけましょう。
気にしすぎに要注意! 女性に多く見られる「自臭症」とは?
今回、お話を伺った丸山さんが、実際の診療シーンで少なからず出会うというのが、「自臭症」の患者さんです。これは、他人に不快な印象を与えるほどではないにもかかわらず、自らの口臭を訴える人のこと。何かのきっかけで口臭を指摘されたり、自分はニオイが強いと思い込んだりして、口腔ケアは完璧なのに、口臭を気にしてしまうのだとか。
でも、人間は吸った空気よりもきれいな息を吐くことはできません。体内で不要になったガスや二酸化炭素を廃棄物として吐き出すのだから、多少のニオイがするのは誰でも仕方のないこと。必要以上に思い悩むようなら、一度、歯科医院で相談してみてください。
丸山さんの経験によれば、「口臭が気になると相談する人ほど問題なく、まったく気にしていない人ほど口臭がある」とか。でも、口腔内が原因の口臭は、歯科医院で定期検診を受けている人ならまず心配はいりません。だからこそ、3年以上、歯科医にかかっていない人は要注意。口腔ケアにあまり興味がない人も口臭リスクがアップするので、思い当たる場合は、早めに歯科医院で診てもらうようにしましょう。
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執筆者プロフィール
丸山 和弘(まるやま かずひろ)
All About「歯の健康」ガイド。歯科診療所で国内外の最新治療法などを身につけた後、1995年より、群馬県高崎市の丸山歯科医院にて臨床一筋の日々へ。小さな子どもの虫歯予防からお年寄りの入れ歯相談まで、数多くの症例と向き合い続ける、地域密着型の現役歯科医師。
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