和食がユネスコの無形文化遺産に選ばれるなど、世界に誇る食文化を持つ日本ですが、減塩に関しては遅れ気味⁉ 実は世界的に見ても塩分摂取量が多いんです。高血圧予防のためにも、減塩は重要な課題でもあります。もちろん塩を摂らないことも重要ですが、塩を体の外にだすことも重要。無理なく減塩するためのポイントを紹介します。
高血圧の多い日本は、減塩後進国⁉
厚生労働省の調査によると、日本人のおよそ4000万人が高血圧に該当していると考えられています。WHOによる国別比較では日本が群を抜いて多いわけではないものの、アメリカやイギリスより高い割合。決して優等生ではありません。
高血圧になると血管に負担がかかり、ほとんど自覚症状がないまま血管の壁は傷つき、厚く、硬く変化していきます。これが動脈硬化で、進行すると心筋梗塞や脳卒中など脳血管障害の引き金に。高血圧が、サイレントキラーと呼ばれる由縁です。
では、なぜ日本人に高血圧が多いのでしょう?一番の要因と考えられているのは、塩分の摂り過ぎです。塩分を過剰に摂ると血液中のナトリウムが増え、浸透圧を一定に保つため血液量が増えます。すると血管壁への抵抗も増し、血圧も上がってしまうのです。
日本はもともと味噌、醤油、漬物など塩分の多い調味料や料理が多く、欧米に比べ塩分過多の傾向がありました。WHOの食塩摂取目標は1日5g未満ですが、厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、日本人の平均食塩摂取量は9.5g。こと塩分に関しては、日本は減塩後進国なのです。
減塩だけでなく、排塩も大切。役立つ3大ミネラル
日本でも厚生労働省が食塩摂取の目標値を定めており、2015年の改定後は男性が8.0g、女性が7.0gとなっています。WHO基準より高いのは、いきなり食文化を変えるのは難しく、徐々に減らそうとしているためでしょう。
例えば、日本では塩はもちろん醤油や味噌などを調味料としてよく使いますが、塩分が多め。またラーメンやうどんなどの麺類、白米のおかずとして魚の干物や漬物も日本人にはお馴染みの食事ですが、塩気が多くなりがち。そのため、普段の食事に気を使っても、なかなか極端な減塩は難しいのが現状なのです。
そこで視点を変えて注目したいのが、体から塩分を排出するミネラルです。代表的なのがカリウムで、腎臓に働きかけ、ナトリウムの吸収を防いで尿への排泄を促してくれる作用があります。カリウム摂取で余分な塩分を除くことができます。
また、カルシウム、マグネシウムも注目したいミネラル。いずれも直接排塩できるわけではないですが、高血圧予防に欠かせません。カルシウム不足は血管を収縮させて血圧上昇を招きますし、マグネシウムには逆に血管を広げ、血圧を下げる働きがあります。積極的に排塩しつつ、高血圧を防ぐならカリウム、カルシウム、マグネシウムの3大ミネラルの摂取が大切ということです。
「排塩」を意識してこんな食材を摂ろう
では、カリウムやカルシウム、マグネシウムはどんな食材で効率的に摂取できるのでしょう?
<カリウム>
カリウムが多く含まれているのは野菜や芋類、果物、海藻、豆類など。水溶性のため、ゆでると溶け出してしまうため、汁ごといただけるスープや味噌汁に入れ調理するのがおすすめです。味噌汁は塩分が多いですが、具に野菜を入れればカリウムが摂れるので、1日2杯ぐらいは食べて大丈夫といわれています。
ただし、カリウムは腎機能が低下している人が摂り過ぎると、高カリウム血症になる心配があるので注意が必要。その場合はかかりつけの医師に相談してみてください。
<カルシウム>
カルシウムは小魚や干しエビ、牛乳、豆腐などに多く含まれ、中でも牛乳はカルシウムの吸収率が良く、調理も不要で毎日手軽に摂れる優良食品。ゴマにもカルシウムが多く、こちらも手軽に使えます。
たくさんとると「大きくなる」不足すると「イライラする」って本当?カルシウムの役割と摂り方
<マグネシウム>
マグネシウムは海苔やワカメ、あおさなどの海藻類のほか、玄米や発芽玄米、干しエビ、ゴマ、アーモンド、カシューナッツなどのナッツ類に多く含まれます。
3大ミネラルを含む食品を積極的に摂ることで、うまく減塩できなくても余分な塩分を排出し、血圧低下に結び付けられます。ぜひ、毎日の食事に上手に取り入れていきましょう!
-
執筆者プロフィール
南 恵子(みなみ けいこ)
NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター、エコ・クッキングナビゲーター、日本茶インストラクターなどの資格取得。現在、食と健康アドバイザーとして、健康と社会に配慮した食生活の提案、レシピ提供、執筆、講演等を中心に活動。毎日の健康管理に欠かせない食に関する豊富な情報を発信していきます。
※本ページの記載内容は記事公開時点の情報に基づいて構成されています。