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「ビタミン博士」が徹底解説!現代に潜む「ビタミン欠乏」のリスクとは?

「ビタミン博士」が徹底解説!現代に潜む「ビタミン欠乏」のリスクとは?

偏った食生活になってしまった時に、陥りがちなのがビタミン不足。さらにビタミン不足が進み欠乏症になると、健康に甚大な影響があるそうです。そこで今回は、実は現代でも油断できない「ビタミン欠乏」の原因と危険性を、ハウスウェルネスフーズの「ビタミン博士」こと山本憲朗研究員に教えてもらいました!

栄養豊富な現代でもビタミンが欠乏する?そこには意外な原因が

――前回、ビタミン不足について伺いましたが、現代人は十分な栄養を摂取できる環境にあるので、深刻なビタミン不足や欠乏状態になることは、めったにありませんよね?

▼前回記事
知っているようで知らないビタミンのこと。「ビタミン博士」に聞いてみた!

山本さん:ところが、一部のビタミンに関しては、潜在的な欠乏状態に陥っている人が少なくないのです。

たとえば、ビタミンB1が欠乏すると脚気の症状が出ます。日本ではかつて、この脚気が国民病でした。昭和40年頃には、日本人は脚気を克服したと思われていましたが、運動選手(特に中学や高校の男子選手)の脚気が問題視されたこともあります(*1)。最近も、イオン飲料などを多飲する小児の重篤な脚気症状が報告されたことから、イオン飲料などの多量摂取におけるビタミンB1欠乏に対して注意喚起がなされました(*2)。

ビタミンB1は糖質からのエネルギー産生に関わるビタミンです。激しい運動を行っている上、菓子類の過剰摂取や砂糖が多く含まれた清涼飲料水をがぶ飲みするような食生活を送っていると、結果的にビタミンB1欠乏が表れやすくなるのです。

――少しでも足りなくなると、脚気などの深刻な症状が出てしまうのでしょうか?

山本さん:現在ではビタミン欠乏による重篤な症状は稀ですが、疲労感・倦怠感・抵抗力の低下などのいわゆる不定愁訴が増加している背景には、潜在性ビタミン欠乏が見え隠れしていると考えられています (*3)。ビタミンは普段は臓器などにストックされており、重要な臓器組織で優先的に利用されるので、少し不足しても即座に自覚症状を感じることはありません。ですが、欠乏が深刻化した時点でドラスティックに症状が出ることがあります。

例えばビタミンCが一時的に欠乏しても、ストックがある間は大丈夫ですが、欠乏期間が長期化してストックが尽きてくると、一気に皮膚や粘膜、歯肉の出血など、壊血病に類似した症状が表れます。

――壊血病というと、大航海時代に海賊よりも恐れられた病気として知られていますよね。

山本さん:はい、15~16世紀の大航海時代には多くの船員が壊血病で死亡しました。そんな時、イギリスの海軍軍医リンドが、オレンジやレモンなどの柑橘類を食べることで壊血病を予防できることを発見し、海軍で全船へのレモンの支給を行ったところ、壊血病が激減したのです。

海軍カレーとビタミン欠乏症の意外な関係

――船員とビタミンに関する病気といえば、最初に話題に上がった脚気もその一つだそうですね。

山本さん:先にもお話しした通り、日本では昔脚気が国民病でした。その脚気対策で大きな役割を果たしたのが、“ビタミンの父”と言われている海軍軍医の高木兼寛です。

明治時代、ある軍艦で脚気のため25人の死者が出たのですが、高木が食事を肉類の多い欧米風に変更したところ、患者が激減し、次の航海では死者数がゼロになりました。これが後にビタミンの発見につながったのです。この功績をたたえて、イギリスの南極地名委員会が1952年に南極大陸の岬に「高木岬」と命名しています。(南極大陸にはビタミン発見の貢献者にちなんだ地名が多くあります)

ただ、高木はビタミン不足が原因だとは分からず、たんぱく質不足が脚気の原因だと考えたようで、脚気予防として肉を効率的に摂れるよう、カレーを海軍の食事に取り入れました(※)。これが有名な「海軍カレー」のルーツ。カレーはご飯と相性が良く、クセのある肉でも美味しく食べられる優秀なメニューだったのです。

※実際は麦や肉などに含まれるビタミンB1が作用した。

――「海軍カレー」にはそんな歴史があったんですね!

働き方や美意識がビタミンDの欠乏に影響?

――ここまで、ビタミンB1やビタミンCの欠乏について教えていただきましたが、他にも現代だからこそ欠乏状態に陥りがちなビタミンはありますか?

山本さん:カルシウムの吸収を助けることで知られるビタミンDが慢性的に不足している人が増えています。ビタミンDは日光を浴びることにより体内で生成されるのですが、オフィスで働く人が多い現代では日光を浴びる機会が減っており、ビタミンDが足りない状態になりやすいのです。ビタミンDが不足すると、筋肉の衰えによる転倒や骨の軟化、変形などのリスクがあります。

ある女子大生グループへの調査では、血中ビタミンDが標準の半分以下だったという報告もあります。これはダイエットなどで十分な栄養が摂取できていないことに加え、日焼けを避ける習慣により、十分に日光を浴びられていない可能性もあります。過度な美白信仰がビタミンD 不足につながっているのです。

このビタミンD不足を解消するには魚類、きのこ類を摂取することと、適度な日光浴が必要です。特に紫外線量の少ない冬は、ビタミンDが豊富な食材を積極的に摂りましょう。

妊娠してからでは遅い?マタニティライフに必要なビタミンとは?

――オフィスワークや美白ブームが、ビタミン不足のきっかけになるとは知りませんでした。また前回、妊娠中の方のビタミン必要量が増加することについてもお聞きしましたが、特に最近は妊娠中の女性に葉酸が必要だと耳にすることが増えました。

山本さん:葉酸は成長に必要なビタミンとして知られ、妊娠前から妊娠中にかけて葉酸が不足することで胎児にNTD(神経管閉鎖障害)という障害が起こることがわかっています。

ここ数年、日本におけるNTDの出生率は、1980年代の2倍弱に増加。出生前診断で生まれなかった数も含むと、3~4倍に増えているのではないかと私たちは考えています(*4)。このように妊婦さんの葉酸不足はかなり怖いのですが、神経管閉鎖障害の50~70%は葉酸をちゃんと摂っていれば防げます。母子手帳にも積極的に摂取するよう書かれていますね。

なお、葉酸は妊娠がわかってからではなく、妊娠前から積極的に摂取しておく必要があるビタミンです。
とはいえ、普段の食事だけで必要量の葉酸を摂取するのは難しいので、妊娠する可能性がある女性は、過剰摂取に注意しつつ、普段からサプリメントや栄養補助食品を使って補っておくことをおすすめします。
妊娠前4週から妊娠12週まで、1日に食事由来の葉酸240マイクログラムに加えてさらにサプリメントなどから400マイクログラムを摂るように推奨されています。

現代人の生活に合わせたビタミン不足対策を!

――ビタミンが発見される前から恐れられていたビタミンの欠乏は、実は過去のものではなく、現代人にとっても身近な問題であることがわかりました。

山本さん:その他のビタミンも、種類によっては昭和の時代より摂取量が少なくなっています。その原因の1つが、野菜の栄養素の減少にあります。おいしさや生産性だけを追求した品種改良や促成栽培などで、野菜のビタミンが激減したのです(※)。また、忙しい現代では、日常の食事で冷凍食品やインスタント食品を便利に使っている人も多いと思われますが、それらの加工食品に含まれるビタミンは決して多くありません。

※近年は、ビタミン含有量の高い野菜の育種研究もなされています。

――忙しい時に簡便な食品に頼るのは決して悪いことではありませんが、栄養という観点からは一緒に野菜を摂るように心がけるなど、気を付けたほうがいいのかもしれませんね。

山本さん:前回もお伝えした通り、新鮮な野菜や肉、魚など主食・主菜・副菜を基本に、様々な品目をバランスよく調理して食べるのが理想です。それが難しい時は栄養機能食品などを利用しましょう。忙しい現代人のスタイルに合った、現代流のビタミン不足解消法になるはずです。

――実は深刻な欠乏状態に陥ることもある現代の「ビタミン不足」。栄養不足は過去のもの……なんて考えずに、きちんと対策することが必要なんですね。

(*1) 阿部達夫ら, 栄養と食糧, 30: 323–328 (1977)
(*2) 奥村彰久, ビタミン, 93(7): 283–290 (2019)
(*3) 武田厚子ら, Trace Nutrients Research, 23: 124–127 (2006)
(*4) 近藤厚生ら, ビタミン, 92(1): 1–17 (2018)

※本ページの記載内容は記事公開時点の情報に基づいて構成されています。

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