「魚よりも肉が好き!」という子どもは少なくありません。でも、魚には豊富に栄養素が含まれているため、偏りなく食べることが大切。そこで、魚の栄養とおいしく食べてもらえる魚料理のコツを、給食管理栄養士の松丸奨さんに伺いました。
「魚が健康にいい」と言われる理由は、豊富な栄養素にあり!
魚には多くの栄養素が含まれています。特にタンパク質は栄養価が高く、非常に良質です。髪や肌の健康にも欠かせないタンパク質は、アミノ酸で構成されている栄養素。アミノ酸の中でも必須アミノ酸は体内で合成できないため、食品から摂る必要があります。この含有バランスを示す指標となるのが“アミノ酸スコア”で、数値が高いほど体内で効率良く働きますが、多くの魚がアミノ酸スコア100という最高値をもっているのです。また、魚には疲労回復に役立つビタミンB群も多く含まれています。
さらにポイントとなるのは、良質な脂肪酸が豊富であること。
脂肪を構成する脂肪酸はいくつかの種類に分けられますが、ここで注目するのは“飽和脂肪酸”と“不飽和脂肪酸”です。飽和脂肪酸は体を動かすエネルギーとして使われる栄養素で、肉や乳製品などに含まれるほか、体内でも合成されます。一方、魚などに多く含まれるのが不飽和脂肪酸。こちらは体内合成ができない“必須脂肪酸”で、血液や脳の健康に関わる働きがあります。どちらの脂肪酸も体にとって大切な栄養素なので、肉も魚も偏りなく、適量を食べるようにしましょう。
魚に多く含まれる不飽和脂肪酸、“オメガ3”ってどんなもの?
ひと口に不飽和脂肪酸と言っても、さらにいくつかの種類に分けられます。その中で、魚から摂ることができるのは、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)。これらとエゴマ油などに含まれるαリノレン酸を総称して、“オメガ3脂肪酸”と言います。
DHAは脳細胞の活性化に加え、血管に働いて動脈硬化の予防や関節リウマチを抑える作用があると言われる栄養素。もうひとつのEPAは、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールを低下させるといった働きがあるとされています。
オメガ3脂肪酸は、特にブリやハマチ、サンマなどの青魚のほか、マグロの赤身にも多く含まれますが、日々の食卓に取り入れるなら比較的安価な青魚がオススメ。サプリメントでも販売されていますが、できるだけ食材から摂取していきたいですね。食べる喜びは、私たちに与えられている幸せのひとつです。口に入れて“おいしい!”と笑顔になり、しかもそれが健康的な食べ物だったらなおのこと素晴らしい。ただの栄養補給ではなく、できるだけ食事として楽しみましょう。
うちの子、どうして魚がキライ? 好きになってもらうポイントは?
給食の現場に立っていると、魚が苦手な子どもとも多く出会います。その大きな理由は「ニオイ」「骨」「見た目」の3つ。魚が苦手な子どもたちに「みんな!お寿司は好きですか?」と聞くと、口をそろえて「大好きーっ!」と答えます。これは、お寿司には魚の3大苦手原因がないから。臭くないし、骨はないし、見た目もキレイ。つまり、魚料理をつくるときは、この3つをクリアすればよいのです。
●Point 1:ニオイを解消する下ごしらえと選び方のコツ
魚の臭みを消すには、下味にお酒、ショウガ、ネギなどを活用するとよいでしょう。また、できるだけ新鮮な魚を選ぶこともポイント。安売りシールの貼られた魚は時間が経ったものがほとんどです。魚は傷みやすい食材なので、時間が経つと臭みが出てくるもの。魚好きになって欲しいなら、極力新鮮なものを選びましょう。
●Point 2:骨が気にならない調理法を心掛ける
骨はひと手間かけて取り除いてあげるか、気にならない白身魚を選ぶとよいでしょう。青魚の骨はしっかりしているので、圧力鍋で煮たりして骨まで柔らかくしてください。サンマのように細くて柔らかい骨の場合は弱火でカリカリになるまでよく焼くのも骨が柔らかくなるのでおススメです。
●Point 3:見た目にも配慮した仕上がりを
姿焼きや姿煮など、そのままの形で目の前にドーンと出されると怯んでしまい、魚嫌いを助長する可能性があります。1匹丸ごと出すのではなく、ほぐしたり切り身を使ったりするとよいでしょう。みりんを使い、照りを出すのもオススメです。
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執筆者プロフィール
松丸 奨さん
文京区立の小学校栄養士。2013年に開催された『第8回 全国学校給食甲子園』にて、男性栄養士で初めて優勝。「食事は子どもたちの夢や未来をつくる」をモットーに給食献立づくりを行うほか、メディア出演や講演会などもこなしている。著書に『日本一の給食メシ(光文社)』など。
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