地震や豪雨など、「もしも」は突然やってきます。そんな時でも、いえ、そんな時だからこそ、健康のためにも食糧を確保しておきたいもの。だけど備蓄をしていても、こまめに消費期限をチェックし、ストックを絶やさないようにするのはなかなか大変です。忘れない、切らさない、無駄にしない非常食の備蓄サイクルをつくるには、どうすれば良いのでしょうか?
非常食=おいしくないを覆す!日本の食品保存最新事情
日本はレトルトやフリーズドライ、アルファ米の技術が高く、おいしく食べられて長期保存が可能な食品がたくさんあります。非常食といえば「乾パン」が思い浮かびますが、近年は、やわらかでしっとりした状態で食べられる長期保存可能な缶入りのパンも発売されています。缶ラーメンや缶おでんなどは「災害時に温かいものを届けたい」という気持ちから発明され、実際に非常に美味しいものがあります。また、加熱剤がついていて温かくして食べられるものや、アレルゲンフリーの非常食もあり、様々な状況や人に対応しています。
また、最近は温めなくてもおいしく食べられるレトルトカレーが進化しています。たとえばハウス食品の「温めずにおいしいカレー」は、常温でも固まらない油を使っていて、そのままさらっと美味しく食べられます。賞味期間も製造後3年あるので、保存にぴったりです。それ以外にも、食べなれたレトルトカレーを、後述する「ローリングストック」で用意しておくのもおすすめです。
災害時には、偏った食事による栄養不足やストレスが原因で免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。予防策として、缶入りやレトルトの野菜や果物からビタミン類を必要量摂取できるように備えておきましょう。被災時に入手困難な野菜や果物も、フリーズドライした食品や、長期保存できる野菜ジュース、レトルトのスープを備蓄しておくと重宝します。食事から十分に摂取しづらい栄養素はサプリメントなどで補うこともできます。
カテキンの抗菌作用やリラックス効果も期待できる緑茶パックも、あると重宝します。
その時、慌てないために…どのくらいの量をストックしておくと安心?
・食料・水は1週間分のストックを目安に
大規模な災害が発生すると、道路の閉鎖で交通や流通に影響が出て、水・食料が足りなくなる可能性があります。住環境など諸条件により回復が遅れるリスクも考えると、1週間分を用意しておくことをおすすめします。特に集合住宅の高層階にお住みの方は長期停電があるとその後の水や食料の確保が大変です。より十分な備蓄が必要になります。
とはいえ、通常のご家庭なら3日程度の食料は冷蔵庫内に備蓄されているのではないでしょうか。それに加えて4日分の水や食料を別途用意しておけば、当面の家族の食事は確保できると思います。
・水は多めに蓄え、節約して使う
水は多めに用意しておきたいもの。飲料水は調理に使う分などを含め、1日3リットル分は使うと想定しておくと良いでしょう。
さらに生活用水(雑用水)を合わせると十分な備蓄が重要になります。生活用水としては空のペットボトルに水道水を詰めておき、1ヶ月程度で交換しながらストックしておくと安心です。飲用にする場合は沸騰させてから飲むと問題ありません。
また、お米は無洗米にして水を節約するなど、少量ずつ使うように工夫しましょう。
・「もしも」の時にあると便利な食品はコレ!
非常時には、簡単に調理ができて高カロリーのものが重宝します。主食はお米の他に乾麺もあると便利です。炊飯器以外でお米を炊いた経験がないと、他の方法でおいしく炊飯するのは意外に難しいもの。水やお湯を加えるだけでふんわりとしたご飯が完成するアルファ米や、お湯があれば短時間で調理できる乾麺は失敗しらずで安心です。
忘れない、切らさない、無駄にしない「ローリングストック」って?
保存性が高くてもいつもは食べない特別なものは、買ってそのまま放置し、気がつけば消費期限が過ぎてしまうということも……。心当たりのある人は、食品選びから見直し備蓄のサイクルを作りやすいようにする「ローリングストック」と呼ばれる方法がおすすめです。
備蓄のコツは、普段でも食べたいと思うものや、消費する頻度が高いものを選んで、定期的に入れ替えること。非常食を特別なものと考えるのではなく、いつもの食事の延長線で考えるのがポイント。食品の保存期間も、5年や10年といった長期保管を見据える必要はなく、半年~1年程度で消費したら買い足しながら入れ替えていきましょう。
たとえば、缶入りの野菜・果物やホールトマトなど、日々の消費・調理用にストックしておくと便利なものであれば、一定のサイクルで消費して買い替えていくため、ストック切れや買い忘れのリスクが少なくなります。
自分なりに一定の水と食料が途切れないようにできればよいので、ストックしたケースに消費期限などの日付などをつけておく方法でもよいですし、3月11日や9月1日など、防災関連の日に関連付けて半年に1度など、備蓄した食料の量や消費期限をチェックする日を決めておくのもおすすめです。在庫をチェックして消費期限の近いものを見つけたら使ってしまい、新しいものを買い足しましょう。
消費と買い足しのサイクルを作りやすいローリングストックを実践すると、無理のない備蓄サイクルをつくることができます。
食品以外にも!用意しておきたい便利アイテム
食品以外にも注目しておきたいポイントがあります。実は災害時には、調理器具をはじめとするアウトドア用品全般が大活躍。火が使えない環境では、火起こしできるグッズや技術を持ち合わせていると大変役に立ちます。火さえ使えれば、フライパンひとつ、鍋一つでさまざまなものが調理できます。たとえば耐熱のポリ袋は、保存はもちろん、お米と同量程度の水を入れて沸騰したお湯で30分ほどゆでることで、水を節約してお米を炊くなど調理にも使えるので大変便利です(※)。フリーザーパックは保存にも便利なのでサイズ違いのものを多めに用意しておくと活躍してくれます。
※耐熱であっても、湯せんに使用できないものもあるので、必ず商品説明を確認しましょう。使用可能なのは高密度ポリエチレン(耐熱・食品用)のみです。
また、流通が回復するまで、食料不足や栄養の偏りなどが続くことを考えると、ビタミンや微量元素、アミノ酸などのタブレットを用意したり、ふだんから近所の人々と協力し、互いに融通し合う「共助」の関係ができているとより安心です。
毎日の生活でも役立つグッズや、おいしい加工食品をふだんから取り入れることで、非常時との境界線をなくし、無理のない備蓄サイクルをつくりましょう。
執筆者プロフィール
和田 隆昌(わだ たかまさ)
All About「防災」ガイド。災害危機管理アドバイザー。感染症で生死をさまよった経験から「防災士」資格を取り、災害や危機管理問題に積極的に取り組み、専門誌編集長を歴任。長年のアウトドア活動から、サバイバル術も得意。主な著書に『大地震 死ぬ場所・生きる場所』(ゴマブックス)があり、講演会ほかTVなどマスコミ出演多数。
※本ページの記載内容は記事公開時点の情報に基づいて構成されています。