野菜を加熱すると栄養が壊れてしまうから生で食べるほうがよい、と言われたり、生野菜はかさ張ってしまいたくさん食べることができないため、加熱した野菜のほうがよいと言われたり、迷ってしまいますね。実は生野菜にも加熱野菜にもそれぞれ長所があります。具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
生野菜のメリット・デメリット
まずは加熱して食べる時と加熱しないで食べる時の栄養素の違いについて説明しましょう。
野菜を茹でるなど加熱して食べる場合、水溶性ビタミンの「ビタミンC」や「ビタミンB群」、水に流れ出やすいカリウムなど栄養素の一部が失われてしまうことがあります。
一方、加熱しないで食べる野菜・すなわち「生野菜」であれば、それらの栄養素をしっかり残して食べることができるというメリットがあります。
また、生野菜には汚れを洗い落とし、食べやすい大きさにカットするだけで、手軽に食べることができるメリットもあります。
加熱野菜のメリット・デメリット
加熱した野菜(温野菜)は、加熱することによって栄養素の一部が分解してしまったり、茹でる際に水に溶けやすい栄養素の一部が流れ出てしまったり、というような「栄養素のロス」が考えられます。
しかし、加熱することによってボリュームが減り、たくさんの量を食べることができるので、調理によってロスした栄養素とたくさん食べられることによるプラスの栄養素を考えると、どちらが優れているとは一概には言いづらいところがあります。
なお、一部には野菜が持つ「酵素」が体に有益で、その酵素は加熱によって分解されてしまうため、加熱しない生野菜がよいというローフーディズムのような考え方がありますが、実はこれは単なる俗説です。確かに熱を加えていない野菜には酵素が含まれていますが、人間が食べた後、消化液によって分解されてしまいます。そのため、人体の中で「酵素」がそのまま使われることはなく、「酵素が壊れる」ことに関しては、生でも加熱でも大きな違いはありません。
食物繊維と加熱について
野菜の栄養素で「食物繊維」が気になる人も多いのではないでしょうか。「食物繊維」は生野菜でも温野菜でも分解されることはありません。
ただし、生野菜よりも温野菜のほうがたくさんの量を一度に食べることができ、野菜の種類や加熱方法によっては食物繊維が柔らかくなるので、加熱したほうが食べやすくなる可能性はあります。
電子レンジで加熱すると?
電子レンジによる調理のよさは「短時間で加熱が仕上がること」です。加熱時間が短ければ、その分、野菜の栄養素が分解されずに残る可能性が高いといえます。
また、茹でたり煮たりするのと違い、野菜が水に触れていない状態で加熱ができる(水溶性ビタミンなどが逃げない)ことからも、栄養素が残りやすい加熱方法だと言うことができます。
冷凍野菜の栄養は?
市販の冷凍野菜はその野菜がもっとも安価になる旬の時期に大量に収穫された野菜を急速冷凍して作っているため、少しくらい栄養素が分解してしまっても、旬を外れた野菜よりも栄養価が高いことが多いです。
また、家庭で野菜を冷凍して保存する場合、冷凍そのもので栄養素が大きく減ることはありませんが、下茹でなどの処理をする際に、栄養素が流れ出てしまうことがあります。また、冷蔵庫や常温で保存している間に失われる栄養素もあるため、新鮮なうちに冷凍保存することをおすすめします。
冷凍野菜は冷凍することで野菜の細胞壁が壊れていますので、家庭で調理する際の加熱時間が短くて済みます。すでにカットされているので皮やヘタなどの廃棄物も出ない上、予め加熱されているものもあるので、調理の手間が生野菜よりも少なくて済むことも冷凍食品野菜のメリットと言えます。
生野菜・温野菜ともに、それぞれのメリットがあります。そのときの料理や気分などに合わせて、さまざまな調理法で調理した野菜を楽しんでいただければと思います。
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執筆者プロフィール
平井 千里(ひらい ちさと)
管理栄養士。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。名古屋女子大学 助手、一宮女子短期大学 専任講師を経て大学院へ進学。「メタボリックシンドロームと遺伝子多型」について研究。博士課程終了後、介護療養型病院を経て、現職では病院栄養士業務全般と糖尿病患者の栄養相談を行う傍ら、メタボリックシンドロームの対処方法を発信。
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