すっかり定着してきた糖質コントロール。食事量を減らし、炭水化物を食べないようにすれば成り立つと考えている方も多くいるのではないでしょうか? しかし、糖質コントロールで大切なのは自己流で行わずそのしくみを知って正しい知識の上で実践すること。ここでは、なぜ効果的とされるのか、また食事の上で気をつけたいことをご紹介します。
糖質を抑えると、体の中でなにが起きる? 糖質と体脂肪の関係について
炭水化物やお菓子など糖質を多く含む食べ物はカロリーが高いことも多くあるため、糖質コントロール=カロリー摂取を抑えると考えている方もいますが、実は関係がありません。糖質コントロールの鍵は、インスリンの分泌にあります。
体のエネルギー源として必要なブドウ糖、このブドウ糖の血液中の濃度を表すのが血糖値で、食事などにより増減します。血糖値は糖質が体の中に入ってくることで上がります。すると、インスリンが分泌され全身の細胞にブドウ糖をとり込ませまることで血糖値を下げてくれます。ただし、インスリンは余った糖質をグリコーゲンや脂肪に変える働きもしますので、インスリンの分泌が多ければ多いほど肥満をまねきやすくなるのです。
そのため、糖質の摂取量をコントロールし血糖値の上昇を抑えることが、インスリンの分泌量を減らし、脂肪の生成を抑えることにつながるのです。
さらに食事に気をつけるとダイエット効果も!?
・筋肉がつくのをたんぱく質が助けて基礎代謝アップ
糖質を抑える食事制限では、食事量は減らさないことが推奨されています。炭水化物以外でお腹を満たしたやすい食材は肉や魚。たんぱく質を豊富に含むものが中心です。たんぱく質は筋肉をつくるのに不可欠な栄養素であり、運動とあわせて筋肉量が増えると、基礎代謝が向上、痩せやすい体づくりに役立つと考えられています。
・食物繊維で満腹感、食べ過ぎを防ぐ
また野菜も糖質が少ないものがふんだんにあります。野菜に含まれる食物繊維は、血糖値の上昇を緩やかにしてくれるため、脂肪がつくられるのを防いでくれます。また、食事に野菜を取り入れると噛む回数が増えるため、早食いを防いで満腹感を感じやすくなり、食べすぎを防いでくれます。
糖質制限なの? ロカボなの? どこまでコントールするべき?
では糖質をコントロールし、肉や野菜を中心の食生活を送る場合、具体的にどのような方法で実践されているのでしょうか。ここでは2つの定義をご紹介します。
糖質制限・・・厳しく糖質を制限します。一般的に1食当たりの糖質量は20g以下とし、1日の総糖質量を60g以下にすると言われています。糖質を抑えることで体内からブドウ糖がなくなると、代わりに蓄えていた脂肪からケトン体がつくられ、エネルギーとして利用されるようになります。脂肪をつくりづらくするだけではなく、体の余分な脂肪分を燃やすという考え方です。ケトン体については次の項目で詳しく説明します。
ロカボ・・・ゆるやかな糖質制限です。1食当たりの糖質量は20〜40g、間食の糖質量は10gまで、1日の総糖質量を130gに抑えることが推奨されています。厳しい糖質制限をせず「おいしく楽しく適正」を目指していて、ケトン体をエネルギーとして利用するわけではありません。あくまでブドウ糖をエネルギーとした上で適正量とし、たんぱく質、脂質、食物繊維をしっかり摂取することで、血糖値の上昇を抑えるという考え方です。そのため、空腹感は敵となり朝昼夜の3食を食べることや、1食当たりの糖質量の下限は決まっていることも特徴的です。
※「ロカボ」は一般社団法人 食・楽・健康協会の登録商標です。
糖質制限で気をつけたいケトン体とは
糖質制限で糖質量を50g以下に制限すると、脂肪からエネルギー源としてケトン体が生成され、痩せやすくなるとされています。一方で、ケトン体が作られることにより、血管内皮細胞に障害を起こす可能性や、ケトアシドーシスという異常が発生する可能性もあるとされています。ケトアシドーシスとは、インスリンの絶対的欠乏が起こす症状です。
また、糖質制限は食材や調味料まで厳密に気にしなくてはなりません。我慢がつづかずリバウンドをしてしまう、逆に小食になり低栄養になるという例もあります。痩せてきれいになりたい、美しく見られたいという動機で糖質制限をはじめる場合、低栄養になってしまっては美しい体はつくられづらくなってしまいます。極端に糖質を減らすのもいいですが、ロカボでゆるやかに制限するほうがハードルは低いでしょう。
糖質が多い主食はどれくらい食べられる? 他は何を食べればいいの?
ロカボではご飯、パン、麺類も食べられます。1食当たり以下の量を目安にすると、糖質の摂取量を少なくすることができます。
- ・ご飯:茶碗1/2〜1/3杯程度
- ・パン:6枚もしくは8枚切り1枚
- ・麺:1/3玉〜1/2玉程度
芋類や根菜類も実は糖質量が多めのため、これらを食べるときは主食の量を少なめにして、糖質を摂り過ぎないように気をつけましょう。また糖質が多めの食品の前には食物繊維が豊富な野菜、きのこ、海藻を先に食べてください。血糖値をゆるやかに上昇させて脂肪をつきにくくする働きが期待できます。たんぱく質をとる場合、しっかりと食べるために、一日の摂取量の目安を知って食べることも大切です。
「1日に必要なたんぱく質=体重(kg)×1.2~1.6 ※体重50kgの場合=60〜80g」
お肉や魚は、スーパーで手に入りやすいものであればお好みのものでかまいません。脂質はロカボの考え方ではどんどん摂った方がいいとされていますが、気になる場合は鶏肉なら胸肉を、豚肉、牛肉は赤身を中心に選ぶとよいでしょう。
<お肉の種類・部位別のたんぱく質> お肉100gあたり
- ・にわとり・若鶏・むね、皮つき-生(たんぱく質21.3g)
- ・ぶた・大型種・ヒレ・赤肉-生(たんぱく質22.2g)
- ・和牛・ヒレ・赤肉-生(たんぱく質19.1g)
※参考:女子栄養大学出版部『調理のためのベーシックデータ』
上の表からもわかるように、お肉だけでたんぱく質を摂る場合、300gで約60g。しっかりと量を食べることが必要です。そのため、全てを動物性のものに頼らず、植物性のたんぱく質も摂るなどバランスを心掛けて、ロカボライフを楽しんでください。
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執筆者プロフィール
五十嵐 ゆかり(いがらし ゆかり)
管理栄養士、料理研究家。グルテンフリーや減塩でも美味しく作れる料理のコツなど、日々の暮らしに取り入れやすい健康レシピを提案している。新聞社の医療サイトでの予防医療に関するレシピ連載(2012年~)をはじめ、企画、レシピ開発、商品開発、執筆、講演、メディア出演、イベント出演、料理教室など、多方面で活動中。
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