加齢による老化は、誰しも逆らえないもの。しかし「見た目年齢」を若々しく保つことは、努力すれば可能です! 今回は、そんなアンチエイジング界で最近話題のキーワード「糖化」に注目。老化を促進させる原因のひとつと言われる「糖化」について紹介します。
体がコゲている!?老化の元凶「糖化」って何?
「糖化」とは、たんぱく質が糖質と結びつく反応によって変性してしまうこと。このたんぱく質と糖質が結びつく現象のことを「メイラード反応」と呼び、身近なところだと、ホットケーキやお好み焼き、焼き鳥、炒めた玉ねぎなど、こんがり焼けたものに見られます。いわゆる“コゲ”ですが、これと同じことが人間に起きることが体の糖化なのです。
体のエネルギーとして使う量を超えて余った糖質と、たんぱく質が体内で結びついてしまうと、糖化されたたんぱく質によって「AGE」と呼ばれる悪玉物質が大量に作られます。血管、骨、内臓、筋肉、肌、髪の毛と、私たちの体の多くはたんぱく質から構成されているのですが、AGEはたんぱく質を攻撃し、その機能を低下させる働きがあります。体の元となるたんぱく質が劣化することで、あらゆる老化につながってしまうのです。
<糖化によって考えられる老化症状>
- ・肌のハリや弾力が失われ、たるみやすくなる
- ・肌にシミやシワができやすくなる
- ・肌のくすみや透明感のなさが目立つ
- ・髪の毛のハリやコシが失われる
- ・血管が詰まりやすくなり、動脈効果に繋がる可能性
- ・骨がもろくなり、骨粗しょう症になる可能性
- ・脳の老化にも影響するため、アルツハイマー病の可能性
あなたの「老化度」は?答えるだけで分かる!糖化度チェック
美容や健康に大きなダメージを与える「糖化」。予防策を知る前に、自分がどのくらい糖化しているのか?まずは診断テストを使ってチェックしてみましょう!
- ☑ 年齢以上に老けて見られることが多い
- ☑ 揚げ物や炭水化物が好きだ
- ☑ ベーコンやソーセージをよく食べる
- ☑ 野菜が嫌いであまり食べない
- ☑ 食べてすぐに寝てしまう
- ☑ ジュースをよく飲む
- ☑ 運動をする習慣がない
多く当てはまる項目が多い人ほど、糖化が進んでいる可能性あります。診断項目からも分かる通り、糖化は主に食事によって進んでしまいます。
ひとつは糖質が余ってしまい体内のたんぱく質と結びついてしまう場合。もうひとつはそもそもAGE含有量が多い物を食べてしまうケースです。
しかし、生きていくうえで食事を避けることはできないうえに、糖質は、私たちが食事から摂取するカロリーの多くを占めています。糖化は完全には避けられませんが、緩やかにする方法をご紹介します。
賢く食べて糖化を緩やかに!最も効果的な糖化対策は「食事」
糖質の摂り過ぎを避け、食べる順番を工夫する
体の大部分を構成するたんぱく質の摂取を減らすわけにはいかないため、糖質が余分にならないよう量を減らしたり、食べ方を工夫すると良いでしょう。
糖質を摂ると血糖値が上がります。糖はインスリンの働きにより細胞に運ばれてエネルギーとなったり、肝臓にグリコ―ゲンとして蓄えます。こうして血糖値そのものは下がりますが、体内の細胞に送られた糖が多いと、使い切れずに余った状態となってしまうのです。血糖値は糖を過剰に摂る、または一気に摂ってしまうと急激に上がってしまいますので、先に食物繊維を多く含む野菜やきのこ類を食べ、血糖値の上昇を緩やかにしましょう。
またチョコやアイス、ケーキやクッキーといったお菓子、清涼飲料水は摂り過ぎには注意。これらに含まれる糖質は単糖類といって、炭水化物の複糖類とは異なり、吸収が早く血糖値を急激に上げるため、糖質が余りやすく、AGEを作り出す元になるため注意が必要です。
食事の組み合わせを工夫する
揚げ物などAGEの高いものを食べたいときは、AGEの増加や吸収を抑えてくれる働きがあるものと一緒に摂るのがおすすめです。たとえば、AGEの吸収を緩やかにすると言われているのがクエン酸。酢やレモンをかけたり、抗酸化作用のある緑黄色野菜を一緒に食べたりすると良いでしょう。ほうれん草、モロヘイヤ、かぼちゃ、小松菜、春菊。またカテキンを含んだ緑茶やポリフェノールはAGEが作られるのを抑えると言われています。
AGE含有量の多い食品を食べる機会を減らす
AGE含有量は、食品によって大きく異なります。そのため、最も効果的な糖化対策は、AGE含有量の多い食品をできるだけ食べないことです。
<AGE含有量がとくに多い食品>
- ・フランクフルト(5分間焼いた豚肉) 1万143KU/90g
- ・ローストビーフ 5464KU/90g
- ・クリームチーズ 3265KU/30g
- ・マグロ(オイル缶詰) 1566KU/90g
- ・バター 1324KU/5g
- ・ベーコン(電子レンジで3分間加熱した豚肉) 1173KU/13g
- ・ポテトチップス 865KU/30g
- ・チキンナゲット 764KU/90g
- ・パンケーキ 679KU/30g
- ・ココア(砂糖入り) 656KU/250ml
- ・クラッカー 653KU/30g
※単位の「KU」は「Kiro Unit(1000単位)」の略で、AGEの含有量を表すもの
※参照 老けたくないなら「AGE」を減らしなさい カラダが糖化しない賢い生活術 (SB新書)
AGE含有量が多いのは、加工肉類、揚げ物、チーズなど。一方で、魚や野菜、果物は少ない傾向にあり、例えばニンジンは10KU、玉ねぎ36KU、バナナ9KU、りんご13KU(いずれも100g、生の状態)程度なので、AGE含有量の高いものは食べ過ぎないように気を付けましょう。
高温調理を避ける
またAGEは調理法によって量が変化し、コゲができやすい高温調理になるほどAGEが増加することがわかっています。フライパンで油をひいて焼く、炒める、揚げるといった調理より、100度以上にならない、茹でる、蒸すといった調理方法の方がAGEは少なくなります。
例えば、じゃがいもを25分茹でるより、揚げてフライドポテトにする方がAGEは高くなります。炒め物や揚げ物を食べた翌日は、茹でる、蒸すといった調理でできる料理にしましょう。また、電子レンジはコゲはつきませんが、マイクロ派を使い短時間で高温加熱をしているため焦げ目をつけているのと同じ状態となりますので注意しましょう。
食事にプラスで行いたい!日常でできる糖化対策
最も効果的な糖化対策は食事ですが、生活のなかでできる糖化対策もあります。日常生活でどんな点に気を付けるべきなのでしょうか。
筋肉量を増やす
筋肉量が多いと、血糖値が上がりにくくなる効果があります。血糖値が高い状態が続くと、糖が余る元となりAGEはできやすくなりますので、血糖値が低いに越したことはありません。消化吸収された糖質は、肝臓でグリコーゲンという物質になり肝臓や筋肉に蓄えられるのですが、筋肉量が増えるとそれを貯蔵する量が増えます。そのため血糖値が上がってしまうことを抑えることができるのです。大きい筋肉を鍛えるのが効果的なので、スクワット1セット15〜20回を3、4セット、毎日の習慣にすると良いでしょう。
食後すぐに軽い運動を行う
糖質を含む食事をすると15分以内に血糖値が急激に上がります。しかし食後すぐにウォーキングをして体を動かすと、食後の高血糖を落ち着かせて、AGEを作りにくくすることができるのです。大きめの歩幅でゆるい早歩きを食後の散歩のつもりで15分~20分ほど行ってみてください。
人生100年時代と言われる、今。せっかくなら若々しく、美しく生きていきたいですよね!健康でキレイな未来の自分を目指して、できるところから糖化対策をしてみてはいかがでしょうか。
-
執筆者プロフィール
宇山 恵風(うやま けいふう)
複数の医療系大学で講師・特任教授などを務める。医学・医療情報を正確にわかりやすく人々に伝え、患者さんと医師・医療スタッフの良好な関係を育む「医療コミュニケーション」が専門。海外アンチエイジング情報の翻訳、取材も行う。ジャーナリスト、ヨガ・書道講師、料理講師、メノポーズカウンセラー。
※本ページの記載内容は記事公開時点の情報に基づいて構成されています。