「ぐっすり眠れない」「スッキリ目覚めない」とお悩みの方はいませんか? 睡眠の質がよくないと、心身共にダメージを受ける可能性もあると言われるので、できる限り改善したいですよね。睡眠についての情報はたくさんあるものの何がウソで何がホントか、わからない。そんな方のために正しい睡眠をご紹介します。
現代人のおよそ2割は、ぐっすり眠れていない!
厚生労働省が行った調査では、睡眠があまりとれていない人とまったくとれていない人の合計は、男性 19.7%、女性 19.6%という結果が出ています。つまり、日本国民のほぼ5人に1人は、睡眠の質が悪いということ。ただし、睡眠の質が悪いことに気付いていない人もかなり多いと考えられるので、実際の数はさらに大きくなっているのではないでしょうか。
※厚生労働省平成28年「国民健康・栄養調査」
睡眠の質が悪くなる要因と、それが及ぼす影響は?
眠れていない人が多い中、睡眠の質が下がる理由はさまざま。大きく関係するのは生活習慣と寝室環境、ストレスの3つが原因と言われています。
生活習慣
生活習慣では光のコントロールが問題となります。たとえば、就寝前にスマートフォンを使用すること。画面から発せられるブルーライトは質のよい睡眠に不可欠なホルモンの“メラトニン”を減らし、見ているうちに眠気が弱まってきます。
寝室環境
温度と湿度、広さ、明るさ、音などが関わります。例えば暑すぎたり、寒すぎたりする部屋では快眠を得られにくくなります。また図書館なみの静けさである40デシベル以上の音があるのも、睡眠によくない影響を与えます。
ストレス
各種のハラスメントや長時間労働などのストレスも睡眠に影響します。通常、日中は交感神経が、眠るときは副交感神経が優位に働くようになっていますが、ストレスなどが原因で自律神経のバランスを崩してしまうと眠ろうと思っても交感神経が働き、不眠や睡眠の質を下げる原因となるのです。
睡眠の質が悪くなると、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や各種がんなどにかかりやすくなる上に、病気が進行しやすくもなると言われています。精神的にも記憶力や判断力、集中力などが低下し、気分が落ち込んでうつ病になるリスクも高まりやすく、早急に改善する必要があります。
結局何を信じればいいの?睡眠の質についてのウソ・ホント
Q1 正しい睡眠時間は6時間~8時間ってホント?
A.×年齢や性別・状況・個人差により異なります
厚生労働省は成人の場合、1日に6~8時間の睡眠を勧めていますが、年齢を重ねるにつれて睡眠時間は短くなります。もともと睡眠は個性的なもの。性別や状況によっても変わってくるので、あまりこだわりすぎずに目安として考えてよいでしょう。
人間は寝床に入ったら自然に眠くなり、夜中に目覚めることがないまま、朝、明るくなるころに自然に目が覚めて、日中は午後の早い時間帯を除いて眠気なく過ごせる。これが理想的な睡眠と言えます。
Q2 カフェインの摂取はNGってホント?
A.〇ただし短時間の昼寝の前に摂れば寝起きがすっきり
カフェインは睡眠物質のアデノシンをブロックすることで、眠気を覚ましてくれます。特に覚醒の水準が低いときや疲労が激しいときに高い効果を発揮されますので、夜の摂取はNG。しかし、短時間の昼寝の後、睡眠慣性を早くなくすためには昼寝の前にカフェインを摂ることは有効です。その効果が表れるまでには15分以上かかると言われていますので、昼寝の時間の目安にしましょう。
Q3 二度寝は身体によくない?
A.×ただし長い時間の二度寝は避けてください
長い時間、二度寝していると、逆に体がだるくなってしまうことがあります。これは、浅い睡眠が、必要以上に長く続くためです。しかし、寝不足を解消するための短時間の二度寝は睡眠不足解消につながります。また、目覚める予定時刻の前後には、コルチゾールというホルモンの血中濃度が急に高まります。コルチゾールは、ストレスを和らげる働きがあり、また、膠原病やアレルギーの治療にも使われているなど、リラックスや多幸感につながると言われています。
Q4 真っ暗な部屋は神経が研ぎ澄まされ眠りの質が下がる?
A.×ただし真っ暗な環境を不安に感じる方は避けてください
たしかに真っ暗な環境を不安に感じる方にはよくありませんが、一般的に睡眠中は暗いほどよいとされています。眠る1〜2時間前からは、やや暗めの白熱灯の下で過ごすと寝付きがよくなり、眠るときの明るさは4ルクス以下が理想的です。なお、朝は2500ルクス以上の強い光を浴びると、スムーズに目覚められます。起床時刻の30分前から徐々に明るくしていくと、さらに効果的です。
質のよい睡眠を実現するために、今日からできること
最後に、理想的な睡眠をかなえるための方法についてみていきましょう
起床するのは毎日、同じ時刻
目覚める時刻を一定にすることで、体内時計のリズムが整います。休日はゆっくり眠っていたくなりますが、平日の起床時間より2時間以上遅くなると、翌日の朝に起きるのが辛くなるので注意しましょう。
食事は1日3回、規則正しく食べるのが基本
朝食を摂ることで胃腸が働き、体内時計のリズムが整います。反対に、夜遅い時刻の食事は胃腸が休まらず、深部体温が高いままとなって睡眠の質が低下するので避けてください。
食事の量は3食ほぼ均等か、夕食を少なめにすることが推奨されています。夕食では刺激物やカフェイン、消化の悪いものは避けた方がよいでしょう。
睡眠の環境を整える室温
理想的な寝室の温度は、16〜26℃を保つとよいでしょう。
夏、寝具を使う場合は室温26度が望ましく、室温28℃を超えると睡眠の質は低下します。一方、冬は16〜19℃が安定した睡眠を得られます。なお、湿度は50〜60%が理想的です。
明るさ
眠る1〜2時間前からは、やや暗めの白熱灯の下で過ごすと寝付きがよくなります。睡眠中は暗いほどよく、4ルクス以下が理想的。フットライトなら同程度の明るさのものがあるので、真っ暗な状態が不安な人におすすめです。なお、朝は2500ルクス以上の強い光を浴びると、スムーズに目覚められます。起床時刻の30分前から徐々に明るくしていくと、さらに効果的。寝室の照明がタイマー付きなら、ぜひお試しください。
環境を整え、規則正しい生活を送ることが質のよい睡眠には不可欠です。ボーッとして過ごすより、睡眠の質を高めることで、健康な身体や効率的にやるべきことを進められるようにしましょう。
-
執筆者プロフィール
坪田 聡(つぼた さとる)
日本医師会、日本睡眠学会、日本コーチ協会所属。All About「睡眠」ガイド。ビジネス・コーチと医師というふたつの仕事を活かし、行動計画と医学・生理学の両面から、睡眠の質の向上に役立つ情報を発信している。
※本ページの記載内容は記事公開時点の情報に基づいて構成されています。