いつも何気なく食べている食事の中に、実は素材の組み合わせや調理によって、栄養成分の吸収を促すなど、おいしいだけでなく健康面でも役に立っているものがあります。今回は、そんな魅力的な「食べ合わせ」の例をご紹介しましょう。
イタリアのマンマの味「トマトソース+オリーブオイル」は健康にもよかった!
トマトにたっぷり含まれるリコピンという赤い色素成分は、抗酸化作用があることが知られています。リコピンは、一般の生食用トマトよりも、ジュースや水煮缶のような加工用トマトの方に多く含まれています。また、加熱したり、(脂溶性のため)油脂とともに摂取したりすると吸収が良くなります。
さらに、ニンニクや玉ねぎを油と合わせて調理すると、ニンニクと玉ねぎに含まれるフィトケミカルの働きで、さらにリコピンが吸収しやすい形になることもわかってきました。
だから、たとえばイタリアのマンマの味・トマトソースのように、トマトをオリーブオイルやニンニクなどを使って煮詰めた調理は、実に理にかなっているのです。ガスパチョやラタトゥイユなどの料理も同様で、おいしいだけでなく、健康に役立つ成分をより活かせる調理法といえます。
臭み消しだけじゃない!干物にカボス・スダチを搾るのは正解
シシャモや、イワシ、アジなどの小魚を丸ごと食べられる干物。動物性食品に多く含まれる良質のタンパク質だけでなく、日本人に不足しがちなカルシウムなどのミネラルも豊富に含まれています。
カルシウムは、人間の体の中で最も多く含まれているミネラルであり、骨や歯の原料となり、他にも筋肉や神経などにも存在しています。しかし食品から摂ったカルシウムは体内で消化吸収されにくいという面があります。
干物などを焼いた時、スダチやカボスなどの柑橘類を搾ると、臭みを消してさっぱりとおいしく食べられますね。そんな柑橘類の酸っぱさの元は、主にクエン酸などの有機酸。実はクエン酸には、カルシウムなどのミネラルを小腸の中で吸収されやすくする働きがあると考えられています。干物を食べる時には、柑橘類をお忘れなく。
お味噌汁の実、定番の野菜や海藻がおすすめなワケ
味噌汁の実(具材)としては、一般的に野菜や芋類、ワカメなどの海藻が使われることが多いですね。野菜や芋類、ワカメなどにはカリウムが多く含まれます。また海藻のヌルヌルはフコイダンやアルギン酸。これらには、余分なナトリウムを排出する働きがあると考えられています。
ごはんと味噌汁、という「日本人の食事」の基本は、やはり健康的。加熱することで不足しがちな野菜なども量をとりやすくなるので、忙しくて料理をするのは面倒という人たちも、できるだけ多様で具沢山な味噌汁を飲むのがよさそうです。
ちなみに、「血圧が高いから、味噌汁は飲まないようにしている」という人がいます。しかし近年、高血圧とお味噌汁の関係性は否定されています。常識的なレシピでは味噌を使う量は少なく、科学的にも味噌汁は血圧に影響しないという報告が出ているのです。それは、大豆由来の血圧を下げる成分と、米麹由来の、腎臓から食塩を排出する成分によるのでないかとみられ、現在も研究が重ねられています。
「焼き魚に大根おろし」は健康面でも相性がよかった
生野菜などには消化酵素が含まれていますが、特に生の大根には、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどの消化酵素が多く含まれていることが知られています。
昔からお餅や焼き魚には大根おろしがつきものです。絡めていただくと、魚のタンパク質や餅のデンプンを消化酵素が分解し、消化をサポートしてくれることを、昔の人は経験的にわかっていたのかもしれません。ただし、酵素は熱に弱いので大根は生で、また酵素を活性化させるためおろして使いましょう。
固い肉やタコなどを軟らかく調理したい時には、先に大根おろしと絡めてしばらく置いてから調理するとやわらかく仕上がります。
スタミナ不足時の王道、レバニラ定食の効果は?
レバニラといえば、疲れた時のスタミナチャージのイメージですね。レバーには、タンパク質だけでなくビタミンB群も豊富。ビタミンB群は、エネルギーとなる糖質やタンパク質、脂質を代謝する上で欠かせない補酵素です。鉄分も多いので、鉄分不足からくる疲労感の回復にも役立ちます。
またレバニラに使用する、ニラや玉ねぎに含まれる独特の匂いや辛味成分である硫化アリルは、ビタミンB群の吸収を高める働きがあり、相乗効果があります。
ごはんは、主成分が糖質。糖質はタンパク質や脂質とともにエネルギーとなる栄養素ですが、ほかの二つよりもまず先にエネルギーに変わります。もちろん糖質がエネルギーに変わる時にはビタミンB1が必要となります。ごはんを主食にして、おかずにレバニラを食べるのは、疲労回復を促す上で理にかなった食べ合わせと言えそうです。
※食べ物は、特定成分を濃縮した薬とは異なり、様々な成分を含むため、成分の作用は認められていてもどの程度の量を食べれば効果があるのか、ということは明確ではありませんので、偏った食べ方はしないように気をつけましょう。
-
執筆者プロフィール
南 恵子(みなみ けいこ)
NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター、エコ・クッキングナビゲーター、日本茶インストラクターなどの資格取得。現在、食と健康アドバイザーとして、健康と社会に配慮した食生活の提案、レシピ提供、執筆、講演等を中心に活動。毎日の健康管理に欠かせない食に関する豊富な情報を発信していきます。
※本ページの記載内容は記事公開時点の情報に基づいて構成されています。