夏になると、何だかやけに食べたくなるのが辛い料理。ランチタイムにふと周りを見れば、「暑い、暑い」と言いながらカレーを食べ、余計に汗を流す人もいたりして……。でも実はこれ、とっても理にかなった行動なのだそうです。All About「食と健康」ガイドの南恵子さんから教わった、暑いにも関わらず、無性に辛いモノを食べたくなる理由とは?
体が自然と求める“涼”を得るために、汗をかいてクールダウン!
人間の体には、常に体温を一定にするメカニズムが備わっています。暑いときには汗をかくことで、皮膚表面の熱が放散され、体温の上がりすぎを防ぎます。
辛いモノを食べたときも同じで、かいた汗が蒸発の際に皮膚表面の熱を奪うため、より“涼”を得られます。タイやインドのような暑い国に、辛い料理が多いことも納得できますね。
食欲不振から引き起こされる、夏バテ予防にも効果的
暑い時期は、どうしても食欲が減退しがちです。そこでオススメしたいのが、辛いもの! 辛い料理に使われるスパイスには、にんにくのように食欲をかき立てる香りを持つものに加え、唐辛子や生姜などの辛味成分も含まれています。
この辛味成分が消化器の粘膜を刺激し、中枢神経の働きを向上。これにより、消化器へ送られる血液の量が増え、消化液の分泌が促進されて食欲増進につながります(※1)。
辛いモノのパワーで、美しさが得られるってホント?
唐辛子に含まれるカプサイシンは、吸収されて血中に入ると、感覚神経から中枢神経系を通じてアドレナリンの分泌を促進。このアドレナリンには、脂肪代謝などのエネルギー代謝や発汗を促す働きがあります(※2)。生姜も同様に、エネルギー代謝が高まると言われる食材。
当然ながら、これらを食べることで痩せる、美肌になるというものではありません。でも、新陳代謝を高めて血流を促すと考えられています。
辛いモノにはさまざまな効果が期待できると聞いて、早速、食べたくなった方もいるのでは? また、夏バテ予防には、偏らずに多様なものを食べることも大切。エネルギー源となるごはんだけ食べても、ビタミンB群を摂らないとエネルギーに換えることはできません。健やかな体をつくるには、タンパク質や脂質、ビタミン、ミネラルなど、幅広い栄養素を摂ることが必要です。
さまざまな食品をまんべんなく食べるようにして、この夏を元気に乗り切りましょう!
- 【参考文献】
- ※1
『スパイスのサイエンス』(文園社/武政三男著)
唐辛子の辛味は胃腸でも味わう(城西国際大学)
トウガラシ(東京農業大学)
- ※2
カプサイシンの生理作用(農林水産省)
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執筆者プロフィール
南 恵子(みなみ けいこ)
All About「食と健康」ガイド。NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター、日本茶インストラクターなどの資格取得。現在、食と健康アドバイザーとして、健康と社会に配慮した食生活の提案、レシピ提供、執筆、講演、商品企画協力などを中心に活動する。
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