日本人の「国民食」とも言われるカレーライス。ルウから作る日本のカレーは、いまや和食と称しても過言ではないくらい、ごはんと切り離せない関係にあります。そんなカレーに合うごはんは、どうやって炊けばよいのでしょうか。家電のプロの戸井田さんに聞いてみたところ、意外な事実が判明しました。
どの炊飯器でも「しゃっきり・かため」が基本
カレーが好きで、家でもよく作るという家電コーディネーターの戸井田さん。ご自宅では複数の炊飯器を使い分けているそうですが、大前提として「どのメーカーの炊飯器でも、『しゃっきり・かため』を選んで炊くのが基本」と説明します。
戸井田さん「大事なのは、ごはん一粒一粒のハリ、適度な歯ごたえ、そして粒が独立していること。カレーはルウをかけて食べますが、粒が独立してサラサラであれば、カレーが粒と粒の間に入り込みやすくなり、まんべんなく絡みます。反対にごはんがもっちりして団子状になっていると、まわりにしかかかりませんよね」
ちなみに、ご自身はどういった機種を使っているのでしょうか。
戸井田さん「わが家の場合、カレーに合わせるごはんは三菱電機の炊飯器(『本炭釜』)を使っています。各社ごとに基本の炊き方でも個性が出ますが、三菱電機は圧力を使わないため、基本的な炊き上がりがしゃっきり寄りなんです。それをさらに、カレーに合うようにしゃっきり・かために設定しています」
各メーカーの炊飯器がそれぞれにこだわりを出す中で、炊き上がりの差が特にはっきりわかるのが、圧力系か非・圧力系かという違い。象印、パナソニック、タイガーなど大手メーカーの多くが、粒が膨らみ「もっちり」した炊き上がりを得意とする圧力IH方式を採用していますが、非・圧力系の炊飯器は、「しゃっきり」を明確に味わえます。とはいえ、もちろん圧力IH方式でも『しゃっきり・かため』を選べばOK。
戸井田さん「最近は炊き分け設定で『カレーに向いています』など教えてくれるタイプもありますね。どの炊飯器の場合でも、炊き方が選べる場合は『しゃっきり・かため』の設定で炊くことが基本です」
意外! ごはんの水分量を減らすのはご法度!?
ところで、ごはんの炊き分けをする際に誰もが陥りやすい落とし穴があるのだとか。
戸井田さん「どの炊飯器でも同じことが言えるのですが、下手に炊飯時の水分量を少なくしてはいけません」
カレーに合わせるごはんは内釜の目盛りより水を少なめにして炊く……という手法は、多くの人がよかれと思い実践しているかもしれません。でも、実はこの方法はNG! 現在の炊飯器の炊き分け機能は、しゃっきりからもちもちまで、水分量を変えることなくちょうどよい弾力・ハリのある炊き上がりになるように設計されているのです。
戸井田さん「自己流で水を少なめにしてしまうと、実はかためになるわけではなく『ぼそぼそ・ぱさぱさ』な食感の美味しくないごはんができあがってしまうだけなんです。たとえ3段階程度でも炊き分けができる場合は、『しゃっきり・かため』を選び、水分量を変えずに炊くことが大事。何度でも言いますが、水の量を減らすのはご法度です!」
炊飯器のポテンシャルを信じて、目盛り通りに炊くことが大事なんですね。
カレー好きに最適な選択が「サードウェーブ炊飯器」にあった?
大手メーカーから発売されている高級炊飯器が人気を博す一方、最近では「バーミキュラ ライスポット」(愛知ドビー)や「バルミューダ ザ・ゴハン」(バルミューダ)、2018年3月に発売されたばかりの「かまどさん電気」(シロカ)といった、「サードウェーブ」とも言われる新しいタイプの炊飯器が登場し、注目を集めています。
たとえば無水調理も得意な「バーミキュラ ライスポット」は、炊飯のために進化した鋳物ホーロー鍋と火加減調節を自動化する加熱機器の組合せによって、ごはんがふっくらおいしく炊き上がると、発売直後から高く評価されました。
いずれも非・圧力系の炊飯方式で、それぞれカレーに合うしゃっきり感が得られそうですが、そんな新しいタイプの炊飯器の中でも、特にカレーが得意なのは「バルミューダ ザ・ゴハン」だと、戸井田さんは語ります。
戸井田さん「炊飯器は、どのメーカーもごはんを主役にする炊き上がりを目指していますが、バルミューダだけは別。ごはんは主役ではなく、脇役・引き立て役であると打ち出しています。その自己主張しないしゃっきりした炊き上がりが、カレーには最適なんです」
一年中カレーや丼物、卵かけごはんなどを愛し、ごはんを白いまま食べない、いわば『ごはんがおかず』とでもいうべき人には、「バルミューダ ザ・ゴハン」がベストチョイスといえるようです。
ターメリックライスなど、バリエーションのコツは?
カレーに合わせて「ターメリックライス」を作る場合など、スパイスをまぜて炊く方も多いのではないでしょうか。そんな時に注意すべき点も教えていただきました。
戸井田さん「炊く前に、あらかじめ水全体にスパイスをしっかりまぜておくことが大事です。浸水時間を長くするのではなく、最初に全体的にまぜて炊けば、きれいにムラなく色がつきます。上にちょこんと乗せるくらいでは、ダメですよ」
ちなみに、スパイスと一緒に炊くとお米が吸水しにくくなり、かためになる傾向はあるものの、カレーをかけるのであれば問題ない範囲とのこと。
その他、こんなテクニックも。
戸井田さん「玄米や雑穀などをミックスするのもひとつの方法です。玄米や雑穀と一緒でも、今の炊飯器は上手に炊けます。パラパラ感が出てカレーに合いますし、健康的にもなるので一石二鳥ですね」
いかがでしたか? みなさんも次の「家カレー」では、しゃっきり・かためモードで、ちゃんと水量を守って、もしスパイスを入れるのであれば、しっかり全体を混ぜることで、カレーに合ったごはんを炊いてみてください。
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執筆者プロフィール
戸井田 満樹さん
家電に囲まれて育った平成生まれの頑張らない系男子。家電コーディネーターの母からの教えで、調理家電を中心に家電に頼れるものは全て頼る、頑張らない生き方を模索中。好きなものはご飯と愛犬。好きな家電は食洗機。
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