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30年後の体や脳を守るため!知っておきたい「血糖値スパイク」を抑える対策とは?

【専門家に聞いた!】健康診断では見つからない糖尿病予備軍の「血糖値スパイク」。その予防法とは?
血糖値スパイクや糖尿病と認知症の関連性を研究する武田先生。
血糖値スパイクや糖尿病と認知症の関連性を研究する武田先生。

「血糖値スパイク」という言葉を聞いたことがありますか? 食後に血糖値が急上昇するという、朝食抜きで採血をする健康診断では見つからないやっかいな異常として注目されています。最新の研究では、血糖値スパイクを放置していると心臓病やがん、そして認知症を生じやすいこともわかってきています。血糖値スパイクとその予防について、大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学の武田朱公(しゅこう)准教授にお話をうかがいました。

糖尿病予備軍である「血糖値スパイク」とは

生きていくためのエネルギー源として、人はブドウ糖を欠かすことはできません。わたしたちが主食として摂取しているごはん、パン、麺類といった炭水化物はブドウ糖を多く含み、それらを摂取すると血糖値が上がります。通常、健康な人の血糖値は1日中ゆるやかに動いていますが、食後にだけ、とがった針のような血糖値の急上昇が見られるのが「血糖値スパイク」です。

糖尿病予備軍である「血糖値スパイク」とは
血糖値の変動を表したグラフ。青いラインが正常な人で、140mg/dlが高血糖かどうかのボーダーラインとなります。紫のラインが典型的な糖尿病の人の血糖値ですが、常に血糖値が高いため、健康診断で発見されやすくなります。一方、赤いラインの血糖値スパイクが起きている人は、食後にのみ血糖値の急上昇が起こるため、健康診断で見逃されてしまうのです。

血糖値の上昇は一時的ですぐに正常値に戻るため、慢性的に高血糖である糖尿病ほどには悪くなさそうな印象を受けます。しかし、鋭く尖ったラインで表される極端な急上昇・急下降は、血管を傷つける有害物質「活性酵素」を発生させたり、大量のインスリンをすい臓に分泌させたりと、実は体に大きな負担を強いているのです。

血糖値スパイクの原因は、血糖値をコントロールするためにすい臓でつくられる「インスリン」というホルモンが不足したり、働きが十分でないことにあります。血糖値スパイクが糖尿病の予備軍と呼ばれるのはこのためです。高血糖状態が続くと血管へのダメージが大きく、細胞が傷つき、コレステロールなどが溜まる原因となるのです。

そうして血管が細くなると、動脈硬化が進行します。さらに傷口を塞いでいた血栓がはがれて血液中に流れ出し、狭い部分に詰まってしまえば、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気の引き金を引いてしまいかねません。

わかってきた、認知症との深い関わり

わかってきた、認知症との深い関わり

さらに、武田先生の研究によって、血糖値スパイクなどの糖尿病が、「認知症」とも関わりが深いことがわかってきました。「糖尿病になったネズミは記憶力が衰えてしまうことが、大阪大学での実験で確かめられました。糖尿病のネズミの脳を調べると、血管の中にアミロイドベータという有害物質が蓄積していたのです。アミロイドベータはヒトのアルツハイマー型認知症の原因となるタンパク質の一つです。」

糖尿病の人が認知症になりやすいことはこれまでも知られていました。糖尿病患者とその予備軍は、そうでない人よりアルツハイマー型認知症の発症リスクが4.6倍も高まると言います。「アルツハイマー型認知症は脳の病気ですが、糖尿病を引き起こす生活習慣と同じ要因によって起こることが最近の研究で明らかになっています。糖尿病の人が認知症になりやすいというよりは、糖尿病と認知症の原因の出所が同じだったのです。」

残念ながら認知症の決定的な治療法はまだありません。しかし、糖尿病はある程度まで予防や治療ができます。糖尿病にならないように心がけること、なってしまった場合でも治療をしていくことで、認知症の予防にもつながっていると武田先生は考えています。

「血糖値スパイクや糖尿病の予防、つまり認知症の予防に早期に取り組むことがなぜ重要かというと、アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドベータが脳にたまり始めるのは、認知症の発症より20〜30年も前だからです。40歳〜50歳台からすでにアルツハイマーの変化は脳の中で始まっており、ゆっくりと進行して70歳〜80歳で発症します。いかに早い段階で血糖値スパイクや糖尿病という危険因子の回避に取り組むかが、高齢になってからの認知症の発症の時期と進行度に影響があるか、覚えておいていただきたいと思います。」

「血糖値スパイク」を見つけるためには

血糖値スパイクを起こしやすい人の特徴には、血縁者に糖尿病の人がいる、炭水化物中心の食事が好き、食べるのが早い、朝食をとる習慣がない、食べる時はお腹いっぱい食べてしまう、運動不足などが挙げられます。ただし、普通の健診では血糖値スパイクはなかなか見つかりません。

血糖値スパイクの有無を確かめるには、かかりつけのお医者さんで食後1〜2時間くらい経った後に血液検査をしてもらいましょう。この時、血糖値が140mg/dlを超えていたら要注意。「太めの中高年の人がなりやすいと思われがちですが、実は細身の若い女性にも血糖値スパイクは驚くほど多いんですよ」と武田先生は話します。

特に血縁者の中に糖尿病の人がいる45歳以上の方は、正確な診断のためにブドウ糖負荷試験をするのがいいそうです。

血糖値スパイク・糖尿病対策に今日からできること

では、血糖値スパイクを防ぐためにはどのような方法があるのでしょうか。一つ目は食べる「順番」です。同じ献立でも血糖値の上昇を低めに抑えられる食べ方があります。例えば、豚カツ定食で考えてみましょう。あなたはどの順番で食べますか?

血糖値スパイク・糖尿病対策に今日からできること

血糖値の上昇を抑えられるのは、野菜→みそ汁→豚カツ→ご飯の順番です。まずは野菜を食べてインスリンを出す準備をします。また、野菜を先に食べておくことで、食物繊維によって糖質や脂質の吸収が抑えられます。「野菜のような糖質の少ない食べものの後なら、少々の糖質を摂っても血糖値が上がりにくいことがわかっています」(武田先生)。次にみそ汁で体をあたため、血液をめぐらせます。豚カツはぶ厚いパン粉の衣を半分くらいはがして食べるのもおすすめ。ブドウ糖を多く含むご飯は最後にして、少なめに盛ってもらうのがいいそうです。

二つ目に、食事の順番と同じくらい大切なのが、「朝ごはん」を食べること。空腹が長時間続くと、次の食事の後に血糖値スパイクが起こりやすくなります。普段は3食食べている人が朝食を抜くと、昼食後にいきなり血糖値スパイクが現れてしまうほど影響は大きいようです。食事は1日3食、規則正しく摂ることが大切なのです。

三つ目は、食後すぐにちょっとした運動をすることです。食後は全身の血液が胃腸に集まり、消化吸収された糖が血液内に広がって一気に血糖値を高めます。その時に体を動かしていれば、血液が手や足の筋肉にも回り、胃腸の活動が抑えられ、糖分がゆっくりと吸収されます。昼食を食べたお店から歩いて職場に戻るといった程度の運動でよいとのこと。ぜひ実践してみてください。

一般的な健康診断で糖尿病の心配はないとの結果が出ても、血糖値スパイクが見落とされていないかは注意が必要です。血糖値スパイク症状のある人は糖尿病になりやすく、糖尿病は認知症をはじめさまざまな重篤な病気の原因となります。「食事の順番を意識するというたったそれだけの習慣が、30年後のわたしたちの体や脳を守ります」と武田先生が強調するように、血糖値スパイクを予防することは健やかに生きるために大切な心がけなのです。

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