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若さと健やかさを保つために大切なお口のケア

若さと健やかさを保つために大切なお口のケア

お口は、体の健康を保つために、とても大切なところ。そう言われれば、誰もが「そのとおり」だと納得するはずです。とはいえ、どのようなお手入れをすればいいのか。そう改めて問われると、答えに困る人が意外に多いのではないでしょうか。「実は歯の磨き方一つとってみても、誤解している人が多いのです」と語る大阪大学歯学部の阪井先生に、お口の機能やケアの仕方などを伺いました。

お口の健康が若々しさの秘訣

―改めてお口の役割から教えてください。

阪井 お口の役割は、大きく4つあります。第1は、食物を食べて飲み込むこと、第2は呼吸すること、第3がしゃべること、そして意外に見過ごされがちなのが、第4のゲートキーパーとしての役割です。

―ゲートキーパーは、初めて聞きました。

阪井 知らない方も多いでしょうが、腸内細菌と同じようにお口の中にも多くの微生物がいます。また、腸と同じで、お口の粘膜にも免疫の働きがあります。この微生物たちとお口の粘膜がガードマンの役割をしていて、病気を起こすような外敵を防いでくれるのです。このような機能面だけでなく、老いを防ぐ意味でもお口はとても重要です。顔の中でも口元と目元には老化が最も早く現れる上に、化粧などで隠すのが難しいですから。

―確かに歯が抜けたりすると大きく印象が変わりそうです。

阪井 老眼は早い人で40歳ぐらいから始まります。歯が衰えるのもこの歳ぐらいからで、手入れを怠っていると歯周病になりやすく歯が抜けたりします。同じ時期にもう一つ気をつけたいのが、お口の中に渇きを覚えるドライマウスなどの障害です。私の診療科のデータによれば、ドライマウスは男女比が1:4と女性に多い症状です。ドライマウスになる理由は、一つには40代になると加齢変化だけでなく、薬を多く飲むようになるためと思われます。高血圧、花粉症、睡眠薬、胃薬などの薬はお口を乾きやすくするのです。女性に多い理由は、ホルモンバランスの変化によるものと考えられます。

―加齢による衰えをフレイルと呼ぶそうですが、お口も衰えるのですね。

阪井 お口の衰えを「オーラルフレイル」と呼びます。お口の中が乾くのは唾液腺の衰えが一因でしょう。さらに舌の筋肉が衰えるために、いびきをかくようになったり、睡眠時無呼吸症候群になったりするケースもあります。舌は筋肉のかたまりですから筋力が衰えると、自らの重みを支えきれなくなります。そのため、あお向けになって眠ると、たれさがった舌が気道を塞ぐのです。すると吐く息が狭くなった気道を通る際に、笛と同じ理屈で音が出ます。これが加齢に伴ういびきの正体です。若い頃にはいびきなどと無縁だった人が、歳をとっていびきをかくようになるのは、肥満だけでなく、舌をはじめお口の周囲の筋肉が衰えることも大きな要因です。

お口の健康が若々しさの秘訣
お口の健康が若々しさの秘訣

誤解されがちなお口のケア

―お口も衰えを防ぐには、早いうちからのケアが大切ということですか。

阪井 そのとおりですが、お口のケアについては誤解もあるようです。そもそもお口のケアといえば、虫歯や歯周病予防のためだけと思われがちです。もちろん、それが大切なことは言うまでもありませんが、お口のケアは全身の健康を守るためであることを意識してください。

―それはお口がゲートキーパーの役割を果たしているからですね。

阪井 ほかにもお口のケアは、口臭予防や味覚を維持する上でも重要です。具体的には、器質的なケアと機能的なケアの2つにわけて考えましょう。例えばお肌のケアなら、まず汚れをとってきれいにするだけでなく、クリームで保湿をしたりマッサージしたりするでしょう。こうしたお肌と同じようなケアが、お口にも必要なのです。そもそも汚れを取るための歯磨きからして誤解されているようです。

―歯磨きに対する誤解とは何でしょう?

阪井 「磨く」という言葉が、誤解を招くのだと思います。歯磨き粉をたっぷりつけて、歯ブラシでゴシゴシこする。こうした「歯磨き」は、歯を傷つけるおそれがあります。大切なのは“歯を磨く”ことではなく“お口の中の汚れを取り除くこと”です。必要以上に力を入れて磨くと歯を削ってしまったり、知覚過敏を引き起こしたりします。一方で歯ブラシを使うだけでは不十分で、歯間ブラシやデンタルフロスを使うことが欠かせません。

誤解されがちなお口のケア

―もう一つの機能的なケアとは、どのようなものでしょうか。

阪井 口腔機能を維持するため、具体的にはドライマウスやオーラルフレイルを防ぐためのケアです。お口の機能が衰えてしまうと、高齢になったときに誤嚥性肺炎などを起こすおそれがあります。これは唾液をしっかりと飲み込めないために気管に入ってしまい、その結果肺にばい菌が入って肺炎を起こす症状で、重症の場合は命にかかわることもあります。

2種類のケアを使い分けて、お口の健康を保ちましょう

―具体的にはどのようにケアすればよいのでしょうか。

阪井 セルフケアとプロフェッショナルケアの使い分けを勧めます。セルフケアとは文字通り、自分でできる範囲のケアをしっかりやることです。まずはお口の中の汚れをしっかり落とすこと。そのためには電動歯ブラシを使うのも一案です。歯の汚れをきちんと落とすために手で磨くと15分ぐらいかかるところを、電動歯ブラシなら3分ぐらいできれいにしてくれます。そして歯間ブラシやデンタルフロスも使い、歯の隙間の汚れも落としてください。できれば毎食後が理想ですが、時間のないときには食べてすぐにガムを噛むだけでも汚れを落とせます。お口が渇く場合は、口内用のリンスやジェル、クリームなどを使ってマッサージしましょう。舌の筋肉の衰えを防ぐためには、お口や舌を動かすトレーニングが効果的です。使わない筋肉が衰えていくのは、体も舌も同じですから。

―こうしたケアなら自分でできますね。

阪井 セルフケアをしっかりやりながら、3カ月に一度ぐらいは歯科医に診てもらうのが理想的です。歯に明らかな痛みがある場合はともかく、初期の虫歯や歯周病などは、自分ではなかなか気がつかないものです。とはいえ病変はできる限り早い段階で処置したほうがいい。歯にこびりついた歯石などは自分では掃除しきれないので、プロにきれいにしてもらいましょう。歯石は細菌の温床です。そこで繁殖した細菌が歯肉を攻撃して、やがては骨にまでダメージを与えます。歯が痛くなってから歯科医に行くのではなく、40代ぐらいからは歯の健康を保つために定期的な検診をお勧めします。

2種類のケアを使い分けて、お口の健康を保ちましょう

お口の健康を守って見た目も中身も若々しく

―お肌と同じような曲がり角が歯にもあるのでしょうか。

阪井 特に女性の場合は、更年期にいろいろと大きな変化が起こりやすくなります。加齢に伴う変化自体には逆らえませんが、手入れを怠らなければ健康は維持できます。体を健康に保ち、若々しさを保つためにも、お口のケアをしっかり心がけてください。

―口元に現れる老いは何とかして防ぎたいですね。

阪井 お口はしゃべることを通じて、感情や個性を表現するためにも重要なパーツです。お口を活発に動かしハキハキとメリハリの効いた話し方をする人からは、若々しい印象を受けるはずです。そのためにも、お口の機能をしっかりと維持しておきましょう。まずは一度、歯科医にきちんと診てもらい、プロと一緒に自分なりのお口のケアプランを立ててみてください。

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