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赤いお肉と白いお肉の健康度、科学的に分析してみると?

赤いお肉と白いお肉、どちらもとてもおいしそうですが……?

赤いお肉とは、文字通り牛肉や豚肉などの見た目が赤いお肉のこと。一方の白いお肉とは、いわゆる赤みも含めた魚の肉。見た目が違い、味も違う。そして、体に与える影響も変わってくるのは、それぞれに成分が異なるので当然です。数年前には、赤いお肉について、WHOの専門組織が発表したレポートが話題となりました。単なる色の違いよりも、もっと大切なポイントについて考えてみましょう。

世界を驚かせた肉の研究レポート

ソーセージやハム、コンビーフなどの加工された肉、あるいは牛肉や豚肉などの「レッドミート(赤い肉)」を食べると、大腸がんになるリスクが高くなる。2015年10月に、そんなショッキングなレポートが世界中を駆け巡りました。

レポートを発表したのは、世界保健機関(WHO)の研究機関、国際がん研究機構(International Agency for Research on Cancer:IARC)。加工肉は人に対して発がん性のある「グループ1」、牛肉や豚肉、羊の肉などの赤い肉は、人に対しておそらく発がん性のある「グループ2」に分類されたのです。

WHOが関わっている、つまり世界的に信頼されている研究機関が出したレポートだけに、発表後は「肉を食べてはいけないのか」とかなりな騒ぎとなりました。誤解をまねかないようレポート発表の3日後にWHOは「がんのリスクを減らすために加工肉の摂取を適量にするよう奨励するものであり、加工肉を一切食べないよう求めるものではない」とのコメントを出しています。

ここで一つ、皆さんにぜひ知っておいていただきたいのが、こうした医学や健康に関する情報の受け止め方です。このところ医学・健康関連の情報が爆発的に増えています。たとえば有名なタレントさんなどの「私は○○を毎日食べて健康になりました」といった話から、大学の先生が推薦する最新の健康食品「○○」などの記事が、週刊誌やインターネット上にはあふれています。そこで少し考えてみましょう。有名人や偉い先生の言っていることだからといって、素直に信用しても大丈夫なのでしょうか。

世界を驚かせた肉の研究レポート イメージ図

健康・医学情報の受け取り方を学びましょう

医学や健康に関する情報を目にしたときには「そのエビデンスは?」を口ぐせにして、信用する前にちょっと考えてみましょう。エビデンスとは、その情報についての科学的な根拠のこと、エビデンスが強いほど信頼できます。

医学の研究には、大きく2つのやり方があります。ランダム化比較試験と観察研究です。ランダム化比較試験とは、薬や特定の治療法の効果を調べるときによく用いられる方法です。まず、研究対象者をできる限り同じ条件の2つのグループにランダム(無差別)にわけます。ランダムにわける理由は、偏りをなくすためです。

そして一定期間、片方のグループだけに薬を与えたり、あるいは特定の治療を行ったりし、その間に何もしなかったもう一方のグループと結果を比較します。何もしなかったグループと、薬や特定の治療を行ったグループを比べてみれば、その有効性がはっきりするという仕組みです。

一方の観察研究は、ある集団を何年か続けて観察し、たとえば特定の食品を食べているグループとそうではないグループにわけて、結果を分析します。ランダム化比較試験に比べると、エビデンスは弱くなります。とはいえ、一定数以上の対象者を集めて観察する研究なので、単なる個人の経験談はもとより、医学的には権威があるけれども一人の学者の意見よりは、情報の信頼性が高いといえます。

さらにランダム化比較試験より強いエビデンスを持つのが、メタアナリシスです。これは、同じテーマについて行われた、複数のランダム化比較試験や観察研究の研究結果を取りまとめたもの。

IARCのレポートが世界を騒がせた理由は、大腸がんに関するメタアナリシスだったからです。このレポートでは、赤い肉や加工肉の消費とがんの関連性を調査した世界の800以上の研究を、10カ国から集まった22人の科学者が評価しました。だからエビデンスは決して弱くありません。

ただ、研究対象となった地域の赤い肉の摂取量は、おおむね1日あたり50~100g。これに対して日本は2016年の国民健康・栄養調査によれば、加工肉を含めて赤い肉は67gにとどまるので、それほど神経質になる必要はないでしょう。私たち日本人は、昔から白い肉をたくさん食べてきました。この白い肉、魚の肉は、赤い肉とどう違うのでしょうか。

健康・医学情報の信頼性

研究が明らかにした白いお肉の力

以前に比べると魚介類を食べなくなったとはいえ、それでも一日あたりの摂取量は65.6g(2016年国民健康・栄養調査/厚生労働省)。私たちは毎日、魚介類を赤い肉とほぼ同じ量食べています。

魚介類には、良質の動物性タンパク質が含まれる一方で低カロリー。ビタミンや必須ミネラルなどの栄養素も豊富で、オメガ3系不飽和脂肪酸(DHA:ドコサヘキサエン酸、EPA:エイコサペンタエン酸)などの機能性成分も含まれています。

体に良い食材として、魚をたくさん食べる人ほど心筋梗塞になりにくいとの研究結果があります。厚生労働省の研究班が、1990年から約11年間、岩手県、秋田県、長野県と沖縄県に住む男女4万人を対象とし、食事を含む生活習慣と虚血性心疾患発症の関連を追跡調査しました。その結果「魚を週に8回食べる人は、1回しか食べない人に比べて心筋梗塞を発症するリスクが約6割低い」ことがわかりました。

ただし、これだけだと観察研究1つだけの結果であり、エビデンスは強くありません。けれども2016年には、魚と健康に関するメタアナリシスが発表されました。

合計67万人を対象とする合計12の観察研究についてのメタアナリシス(※1)を行った結果、魚の摂取量が多い人ほど死亡するリスクの低いことが明らかになったのです。

別のメタアナリシス(※2)によると、1日あたり85~170gの魚を摂取すると、ほとんど魚を食べない人と比べて心筋梗塞により死亡するリスクが36%低下することも明らかになっています。この場合は、特に油の多い魚が効果的であることがわかっています。

魚に多く含まれる、DHAやEPAなどオメガ3系不飽和脂肪酸の摂取量が多いと、生活習慣病に関わる中性脂肪やコレステロール値を改善する効果があり、心疾患のリスクが低くなることも明らかになっています(※3)。

魚摂取量と虚血性心疾患リスクの関係のグラフ
心筋梗塞に注目すると、魚を週に8回食べる人は、1回しか食べない人と比べて発症するリスクが約6割低い。
国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター
予防研究グループ 多目的コホート研究「魚・n-3脂肪酸摂取と虚血性心疾患発症との関連について」より

できれば毎日食べたい白いお肉

では、体に良いとされる白いお肉を、毎日どれぐらい食べるとよいのでしょうか。DHAとEPAについては、1日1グラムがめどとされています(※4)。これを実際の魚に当てはめてみると、アジの開きなら0.7枚、サンマの塩焼きなら0.4尾、ブリ(ハマチ)の刺し身で4.7切れぐらいとなります。

DHAとEPAをとると、冠動脈疾患や脳梗塞、特に60歳以上の高齢者で視力低下の原因となる加齢黄斑変性症などを予防する効果の高いことが認められています。

健康情報を目にしたときには、少しだけエビデンスの強さに注意してみてください。その上で健康に良いとされるものをバランスよく、自分の好みも考えて食べるようにする。これが、特に50代ぐらいからの食生活では大切にしたいポイントです。

できれば毎日食べたい白いお肉 イメージ図

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